読書とは何か
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
仕事を成功させるには冷静な現実感覚が必須
第2話へ進む
書物こそ永遠に尽きることのない知恵を与えてくれる友
読書とは何か(1)私たちは本から何を得るべきなのか
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ものを考えるとき、私たちは書物に頼ることがある。いったい読書とは何か。読書が私たちに何を与えてくれるのか。この命題について、中東の逸話から江戸時代の文筆家まで、古典的な書物の中で語られた言葉を引用しながら、迫っていきたい。(全6話中第1話目)
時間:18分15秒
収録日:2014年4月9日
追加日:2014年7月3日
≪全文≫

●書物こそ、永遠に、尽きることのない知恵を与えてくれる友である


 皆さん、こんにちは。

 私たちは、学問、あるいは、勉強のみならず、新しい社会における活動に際しましても、常にものを考えるときに書物に頼ることがあります。それは、書物が多くの知恵を与えてくれるからです。そこで、今日は、読書とは何か、あるいは今、私たちは本から何を得るべきなのか、ということについて、少し古典的な書物を中心にお話してみたいと思います。

 イスラム史における有名なエピソードがあります。ある日のこと、イスラム・スンナ派の最高権力者、すなわち預言者ムハンマドの正統的な末裔とされる継承者カリフは、知恵のある学者のもとに、自分の話相手をさせようとして、使者をつかわせました。すると、この学者は、「今、賢者と話し合っている最中だから、用が済み次第、陛下のもとに伺候する」と答えました。

 しかし、この学者はすぐには出かけなかったのです。カリフは、「その賢者とは何か」と問いただしたところ、使者はカリフに向かって、「いいえ、今その学者のもとには誰もおりません」「学者はただ書物を読んでおり、書物を重ねたまま一心不乱に読みふけっているにしかすぎません、陛下」と答えました。当然カリフは怒り、「すぐにここへ引き立てよ」と、無理やりにでも引っ張ってくるように使者に命じました。そして、その学者に対し、「お前は、いったいわしの命令に背いて何をしていたのだ。誰もいないのに本を読みふけっていたとは、けしからんことではないか」と問いただしたのです。

 すると、この賢い学者は次のように詩をうたったのです。

 われらのもとには話しても話しても
 倦(う)むことのない友がおります
 彼らは陰に陽に誠実で信用できる者たちです
 皆、過去の知識をわれらに教えてくれます
 意見、教養、名誉、威厳のすべてを
 それらの者は「死者だ」と申されたところで
 間違ってはおりません またもし
 「生きた人間だ」と申されたところで
 嘘を申されたのでもございません
 
 すなわち、ここで言う友とは何かと申しますと、書物に他なりません。書物こそが、永遠に、そして尽きることのない知恵を与えてくれる自分の友であるということです。

 このように、カリフが、知に対するこの学者の関心、敬意をまた愛でて、遅れたということの無礼をとがめようとしな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
西洋哲学史の10人~哲学入門(1)ソクラテス 最初の哲学者
ソクラテス:「フィロソフィア」の意味を問う最初の哲学者
貫成人
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
歴史の探り方、活かし方(3)古書店巡りからネット書店へ
ネット古書店で便利に買える時代…「歴史探索」の意義とは
中村彰彦
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新