読書とは何か
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山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
休日には、平素の考えを見直し、深め、反省して次に生かしたいと考える人が多いだろう。そのための手段こそ「古典」だと山内昌之氏は言う。古典に接して開かれる世界の広さと豊かさ、その全てを自国語で読める喜び。当たり前に見過ごしている書店の情景から、日本文化の特質も見えてくる。(全6話中第4話目)
時間:15分10秒
収録日:2014年4月23日
追加日:2014年8月1日
≪全文≫

●教養習得と人生修養のために本を読んだ武家階級


 皆さん、こんにちは。新しく企業や官庁に入られた皆さんも、そろそろ新しい環境に慣れてきているところだと思います。前回は、学生生活を終えられて、新しい職業に就き、職場に入られたばかりの皆さんに、書物を読む手がかりや私が考える読書の意味などについてお話ししました。

 前回、私は、江戸時代の「寛政の改革」の政治家であった、老中・松平定信について触れました。松平定信は非常に真面目な人でしたから、読書が非常に堅苦しい。それに比べて、謹厳そうに見える吉田松陰が、実は現代で言う雑本や一般書なども幅広く読む人であったことに触れた次第です。

 しかしながら、双方に共通・一致しているのは、やはり読書というものが、教養や知識を獲得するための大変大きな手段であった点です。彼らにとっての読書は、教養の習得を通して人生を修養すること、人生において自らを深めていく大きな手がかりであったということに触れました。今とはやや違うのはその点です。


●読書は、活字離れ世代にも与えられた大きな喜び


 かつて、武士階級は社会のエリートでしたから、読むべき本が人生のステージ(段階)や年齢に応じて違っていました。それを素直に順を追って読み進めていたということは、前回の松平定信についてもお話ししました。

 ところが現在は、松平定信が言う「通俗の書」である文学や芸能関係の書物を読まないどころか、何と申しましても本そのもの、あるいは活字を読まないという学生たちが増えてきました。

 新しく社会に出た皆さんは、これからはどうしてもさまざまな形で活字に接せざるを得なくなりますが、現在の若い世代が、インターネットやアニメーションあるいは漫画によって育っているということは、否定できない事実です。

 しかしながら、読書というものの意味を考えてみると、やはり本を読み、活字を読むのは、人間にとって無上とは申しませんが、すこぶる大きな喜びの一つを与えてくれる。このことは、だんだんと社会生活を経験していくうちにお分かりになられるかと思います。


●世界中の古典が容易に楽しめる日本文化の素晴らしさ


 現在の若い社会人の皆さんも、松平定信や吉田松陰の時代と同じ日本人として、共通する面があります。確かに今、私たちは、この二人の偉大な先人たちのように四書五経や中国の古典...

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