今こそ問うべき「人間にとっての教養」
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動画メディアが「本の書き手」にとって邪魔になるとき?
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(5)動画メディアとテキストメディアの違い
橋爪大三郎(社会学者/東京工業大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
物事の本質を立体的に理解するためには、テキストメディアだけではなく、ネットや動画メディアをうまく活用するのが有効である。一方、発信者側に視点を移すと、動画メディアを使って発信する場合、注意が必要だという。それはどのようなことなのか。動画メディアとテキストメディアを活用するときの課題、注意点について語る。(全7話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:7分35秒
収録日:2021年3月25日
追加日:2021年5月27日
≪全文≫

●動画とテキスト、両方のメディアを活用する


―― 先ほど先生のお話にあったように、本が信頼できる理由は、まさに編集や出版社、著者への信頼にあるということでした。また、歴史の伝統の積み重ねの上に、そうした文化ができたということについてもお話いただきました。一方で、ネットでそれをどう実現するかということも、もちろん考える必要があります。

 そして、先ほどテキストの部分と映像の部分についてのお話がありました。私がよく思うのは、例えばこのような形で実際にインタビューをさせていただいたときの印象と、それを文字に起こしたものを見たときの印象が、まるで違うということです。テキストにすると平板だけど、お話を聞いていると、非常に立体的に感じるというケースもあります。

 ただもう一方で、知識を効率的に身につけるためには、テキストのほうが便利であったりします。自分で考えるためにも、テキストを読んで、考えるほうが便利なことがあります。この使い分けといいますか、両方あることの良さは、まさに先生が先ほどおっしゃったことにあると思います。このような、動画メディアの使い方とテキストメディアの使い方に関して、先生はどのようにお考えですか。

橋爪 両方あるのが、一応理想的です。両方あったほうが、立体的に物事の本質を捉えることができます。だけど、ネットメディアがなく、今のようないろいろなメディアがない時代は、そういうことは望むべくもありませんでした。


●どんな本でもテキスト以上の情報を想像して味わうことができる


橋爪 例えば、150年前にヘーゲルという哲学者がいました。ヘーゲルは大学で講義を持っていたから、大学で学生を前に講義をします。学生はヘーゲルの顔を見て、ヘーゲルの人柄などいろいろなものをありありと描きながら講義に出席して、ノートを取ったりしていました。それが出版されたりすると、大学でヘーゲルの学生ではない大勢の人たちもヘーゲルの本を読みます。

 そうすると、ヘーゲルという人に会ったことがあって、その人となりをなんとなく知っている人がヘーゲルを読んだときと、一方で、ヘーゲルがどんな人だか分からない、肖像画を見たことがあればいいほうというくらいの大勢のドイツ人がヘーゲルの書いたものを読んだときとで、両者に差があった場合には、何か伝わりきれていない部分があるということになります。
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