今こそ問うべき「人間にとっての教養」
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「社会の分断」と戦うためには教養を武器にすることが必要
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(3)SNS時代における教養とは
哲学と生き方
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
かつてリーダー層が身につけるべきものとされていた教養だが、民主主義の現代社会では全ての人が身につけるべきものであるとされている。一人一人が自分で意思決定しないといけないからだ。さらに「社会の分断」が進んでいる現在では、教養がより一層、重要性を増している。それは、テレビや新聞などマスメディアの衰退と、ネット、SNSの普及と関係がある。いったいどういうことなのか。SNS時代における憂慮すべき問題について語る。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分29秒
収録日:2021年3月25日
追加日:2021年5月13日
≪全文≫

●民主主義社会ではみんなに教養が求められる


―― さらに、わたしが非常にこのご本(『人間にとって教養とはなにか』)で印象深かったのが、もともと教養とは、先生がおっしゃったように、リーダー層のためのものだったということです。社会のリーダー層が、社会の人びとをうまく導くために身につけるべきものが、いわゆる古典的な意味での教養だというお話でした。

 しかし、非常に大衆民主主義化した現代社会においては、教養とはリーダー層だけに必要なものではなく、全ての人が身につけるべきものであると書かれています。その理由は第一に、自分の喜びのためです。第二に、民主主義的な社会をより良く成立させるためです。そして第三に、人びとと手を携えて、より良い社会をつくり出すためです。これは別にリーダーにならずとも、皆さんが持ってなければいけないんだという非常に力強いメッセージを書かれていました。それぞれがその覚悟を持たなければならないということですね。

橋爪 民主主義の社会とそうでない社会がありますよね。

―― はい。

橋爪 民主主義でない社会では、何かの決定をしたときに、こっちの決定をするか、あっちの決定をするかを、いちいちみんなに聞きません。どこかの誰かが決めたら、それで決まりというやり方です。

―― 決定がばっと出されるということですよね。

橋爪 皇帝や王様、独裁者など、いろいろいるわけですが、誰か力のある人が決めます。そして、他の人は蚊帳の外に置かれていて、言われたことをやるだけという状態です。

 このような状態だと、いろいろまずい点があります。なにより、大部分の人は「フォロワー」となってついていくだけで、自分の人生の主人公ではなくなってしまいます。自分の人生が、右に行くか左に行くか、他の人に言われて決まるという状態なので、つまり、自分のことが自分で決められないということです。

 自分の生き方を誰かに決められてしまうというのは、権力の問題と関係しており、誰かが権力を握っていて、自分には権力がないという状態です。この状態では、みんなで一緒に生きていくときにとてもマズイと思ったわけです。

 その結果、歴史上のいろいろな努力があって、そのように誰かが権力を独り占めにするのを止めましょうということになりました。そして、みんなが自由に意見を言って、みんなの相談と合意によって自分た...

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