今こそ問うべき「人間にとっての教養」
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「社会の分断」と戦うためには教養を武器にすることが必要
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(3)SNS時代における教養とは
橋爪大三郎(社会学者/東京科学大学名誉教授/大学院大学至善館教授)
かつてリーダー層が身につけるべきものとされていた教養だが、民主主義の現代社会では全ての人が身につけるべきものであるとされている。一人一人が自分で意思決定しないといけないからだ。さらに「社会の分断」が進んでいる現在では、教養がより一層、重要性を増している。それは、テレビや新聞などマスメディアの衰退と、ネット、SNSの普及と関係がある。いったいどういうことなのか。SNS時代における憂慮すべき問題について語る。(全7話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分29秒
収録日:2021年3月25日
追加日:2021年5月13日
≪全文≫

●民主主義社会ではみんなに教養が求められる


―― さらに、わたしが非常にこのご本(『人間にとって教養とはなにか』)で印象深かったのが、もともと教養とは、先生がおっしゃったように、リーダー層のためのものだったということです。社会のリーダー層が、社会の人びとをうまく導くために身につけるべきものが、いわゆる古典的な意味での教養だというお話でした。

 しかし、非常に大衆民主主義化した現代社会においては、教養とはリーダー層だけに必要なものではなく、全ての人が身につけるべきものであると書かれています。その理由は第一に、自分の喜びのためです。第二に、民主主義的な社会をより良く成立させるためです。そして第三に、人びとと手を携えて、より良い社会をつくり出すためです。これは別にリーダーにならずとも、皆さんが持ってなければいけないんだという非常に力強いメッセージを書かれていました。それぞれがその覚悟を持たなければならないということですね。

橋爪 民主主義の社会とそうでない社会がありますよね。

―― はい。

橋爪 民主主義でない社会では、何かの決定をしたときに、こっちの決定をするか、あっちの決定をするかを、いちいちみんなに聞きません。どこかの誰かが決めたら、それで決まりというやり方です。

―― 決定がばっと出されるということですよね。

橋爪 皇帝や王様、独裁者など、いろいろいるわけですが、誰か力のある人が決めます。そして、他の人は蚊帳の外に置かれていて、言われたことをやるだけという状態です。

 このような状態だと、いろいろまずい点があります。なにより、大部分の人は「フォロワー」となってついていくだけで、自分の人生の主人公ではなくなってしまいます。自分の人生が、右に行くか左に行くか、他の人に言われて決まるという状態なので、つまり、自分のことが自分で決められないということです。

 自分の生き方を誰かに決められてしまうというのは、権力の問題と関係しており、誰かが権力を握っていて、自分には権力がないという状態です。この状態では、みんなで一緒に生きていくときにとてもマズイと思ったわけです。

 その結果、歴史上のいろいろな努力があって、そのように誰かが権力を独り占めにするのを止めましょうということになりました。そして、みんなが自由に意見を言って、みんなの相談と合意によって自分た...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
「50歳からの勉強法」を学ぶ(1)大人の学びの心得三箇条
大人の学び・3つの心得=自由、世間が教科書、孤独を覚悟
童門冬二

人気の講義ランキングTOP10
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建