『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』
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『ホモ・デウス』を読んで長谷川眞理子氏が投げかけた問い
『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』(5)人類の未来
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
『ホモ・デウス』という本には、人類の未来の話として、AIの発展と人類のさらなる欲求の形としての不老不死を求める動きが書かれている。現在に至るまでの発展の歴史の中で、戦争や飢饉、感染症を通じた死の確率は大幅に下がり全体として幸福になった人類は、次なるステップとして不老不死を求めると、『ホモ・デウス』では主張されている。果たして本当にそうか。長谷川真理子氏は、人類の未来に対して異なる視点を投げかける。(全5回中第5回)
時間:6分32秒
収録日:2019年4月3日
追加日:2019年8月9日
≪全文≫

●幸福を達成してきた人類は不老不死という新たな夢を追求する


 その次に、同じ著者が『ホモ・デウス』という本を書きました。原著には、Brief History of Tomorrowという副題がついています。デウスというのは神様という意味です。また、Brief History of Tomorrowという副題からも分かる通り、この本のテーマは未来予測です。

 この本は上下2冊刊行されています。私には上巻と下巻の間の整合性に関してよく分からない部分がありますが、まず上巻では、人類がこれまでに何を達成したか、ということについて記述されています。この長い歴史の中で、ここ数百年、数十年の間に何ができたかというと、世界大戦のような大きな戦争を回避し、飢えで死ぬという飢饉を回避し、病気に関してもおおむね普通の病気は治るようになって、みんな一応のところは幸せになってきたわけです。戦争や飢饉により多くの人々が犠牲になる、もしくは感染症によって高確率で乳幼児が亡くなるということがなくなったという意味では、みんなおおむね幸福になってきたといえるでしょう。

 もちろんまだ戦争に苦しんでいる地域もあり、飢饉がある地域もあり、乳幼児が亡くなることもありますが、全体を平均して見た時に、人類はおおむね幸福になりました。その人類にとって、今や何が不幸かというと、それは年を取っていくことと死ぬことであると、著者は主張しています。年を取っていくこと、そしてやがて必ず死に至ることは嫌なことだろうというのです。

 そこで、この不幸の克服が次の人類の課題となるのです。加齢もしない、死にもしないという存在は神様のようなものなので、神様としての人間ということで『ホモ・デウス』というタイトルがつけられています。この主張に関しては、私は完全には同意できない部分もあります。このような考察は良いのですが、本当にみんながそのように考えるのかという点に関しては、疑問が残ります。


●AIと不老不死の関係に対する懐疑的な視点


 このように、上巻では不老不死を追究する人類の話が展開され、多くの人が不老不死をどのように追究しているのかについて書かれています。対して、下巻では、これから急速に発展していくAIの話が展開されます。AIが人間にだんだん近づいていくというけれども、本当にそうでしょう...

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