『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『ホモ・デウス』を読んで長谷川眞理子氏が投げかけた問い
『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』(5)人類の未来
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
『ホモ・デウス』という本には、人類の未来の話として、AIの発展と人類のさらなる欲求の形としての不老不死を求める動きが書かれている。現在に至るまでの発展の歴史の中で、戦争や飢饉、感染症を通じた死の確率は大幅に下がり全体として幸福になった人類は、次なるステップとして不老不死を求めると、『ホモ・デウス』では主張されている。果たして本当にそうか。長谷川真理子氏は、人類の未来に対して異なる視点を投げかける。(全5回中第5回)
時間:6分32秒
収録日:2019年4月3日
追加日:2019年8月9日
≪全文≫

●幸福を達成してきた人類は不老不死という新たな夢を追求する


 その次に、同じ著者が『ホモ・デウス』という本を書きました。原著には、Brief History of Tomorrowという副題がついています。デウスというのは神様という意味です。また、Brief History of Tomorrowという副題からも分かる通り、この本のテーマは未来予測です。

 この本は上下2冊刊行されています。私には上巻と下巻の間の整合性に関してよく分からない部分がありますが、まず上巻では、人類がこれまでに何を達成したか、ということについて記述されています。この長い歴史の中で、ここ数百年、数十年の間に何ができたかというと、世界大戦のような大きな戦争を回避し、飢えで死ぬという飢饉を回避し、病気に関してもおおむね普通の病気は治るようになって、みんな一応のところは幸せになってきたわけです。戦争や飢饉により多くの人々が犠牲になる、もしくは感染症によって高確率で乳幼児が亡くなるということがなくなったという意味では、みんなおおむね幸福になってきたといえるでしょう。

 もちろんまだ戦争に苦しんでいる地域もあり、飢饉がある地域もあり、乳幼児が亡くなることもありますが、全体を平均して見た時に、人類はおおむね幸福になりました。その人類にとって、今や何が不幸かというと、それは年を取っていくことと死ぬことであると、著者は主張しています。年を取っていくこと、そしてやがて必ず死に至ることは嫌なことだろうというのです。

 そこで、この不幸の克服が次の人類の課題となるのです。加齢もしない、死にもしないという存在は神様のようなものなので、神様としての人間ということで『ホモ・デウス』というタイトルがつけられています。この主張に関しては、私は完全には同意できない部分もあります。このような考察は良いのですが、本当にみんながそのように考えるのかという点に関しては、疑問が残ります。


●AIと不老不死の関係に対する懐疑的な視点


 このように、上巻では不老不死を追究する人類の話が展開され、多くの人が不老不死をどのように追究しているのかについて書かれています。対して、下巻では、これから急速に発展していくAIの話が展開されます。AIが人間にだんだん近づいていくというけれども、本当にそうでしょう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(2)60歳は折り返し地点
「悠々自適」は定年を正当化するための神話にすぎない
出口治明