性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT
この講義は登録不要で無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
SRY遺伝子とは何か?哺乳類の性決定の仕組み
第2話へ進む
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
生殖には「無性生殖」と「有性生殖」の2種類がある。ヒトは雌と雄が交配して子孫を残す「有性生殖」を行う生物だが、子孫を残すという意味では、個体が単独で新しい個体をつくる「無性生殖」のほうが有利である。にもかかわらず、なぜ多くの生物が有性生殖を行うのか。そしてなぜ雌と雄という二つの性になったのか。(全4話中第1話)
時間:12分54秒
収録日:2021年6月21日
追加日:2021年8月10日
≪全文≫

●第一の謎:なぜ性はあるのか


 こんにちは。総合研究大学院大学の長谷川眞理子です。今日は、最近いろいろ話題になっている「LGBT」と呼ばれる人びとの、性の不一致について、進化生物学ではどのように考えられるかをお話ししたいと思います。

 そのためには、雄と雌という性がなぜあるのかをはじめに知っていなければいけません。まずはその話から始めたいと思います。

 実は「性」があるのは不思議なことで、いくつもの謎があります。まず一つには、小さな動物だけではなく、小さな生き物の多くは無性で、性なく繁殖します。例えば、分裂する、体が半分になる、芽が出てその芽がまた別の一個体になったりします。雄と雌という性を介さないので、これを「無性生殖」といいます。そうした生き物はたくさんいます。それでうまくいくのに、なぜ性はあるのかが第一の謎です。

 また、雌がいて雄がいない生き物も結構いて、それは「単為生殖」といわれています。雌が精子を受精しない卵を産み、その卵はそのまま大人になって発生します。これはミジンコやアブラムシなど、小さな昆虫に多いのです。

 一番大きな動物では、アリゾナのトカゲの一種にそうした生殖の仕方をするものがいるそうです。卵は産みますが、精子は関係なくそのままトカゲの親になります。

 このように生物学的にみると、雄と雌が一緒になって子どもができるのは、それほど当たり前ではないことが分かります。

 それを数学的に解析してみると、雄と雌がいて、卵と精子を出し合って一個体ができる有性生殖は、効率が悪いのです。無性だと、一つが二つに分かれて、この二つがそれぞれ二つに分かれて、というようにどんどん増えていきます。しかし、雄と雌の有性生殖は、自分の繁殖相手は個体の中に半分しかいないので、それを見つけなければいけません。相手を見つけて、両方とも都合が良ければ一緒になり、そこで二匹が初めて一匹を作るので、無性生殖に比べてとても効率が悪いのです。

 生命の進化の初期にもし有性生殖と無性生殖があったとしたら、無性生殖のほうがどんどん増えるので、有性生殖のほうは得にはなりません。これだとなかなか進化しにくいと思われるので、性がなぜあるのかは大きな謎なのです。


...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
知性の進化と科学技術文明の未来(1)ヒトは本当に賢いか
なぜ人類は進化できたか?…5つの環境要因と脳の発達
長谷川眞理子
科学的思考はなぜ大切か(1)「状態図」という概念
科学的思考とは「なぜ?」を追究していくこと
岡部徹
発酵はマジックだ!
色を消し、脂を溶かし、水を分解―スゴすぎる発酵の力!
小泉武夫
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
IoTとは何か~モノのインターネットの本質(1)TRONは究極の「縁の下の力持ち」
坂村教授が開発したTRON―知られざる世界標準
坂村健
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹

人気の講義ランキングTOP10
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
編集部ラジオ2026(37)長谷川眞理子先生の公開収録!
【アンケート&公開収録】長谷川眞理子先生:男と女でどう違う?能力の高め方
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(2)タタールのくびきと「第三のローマ」
なぜロシアが「第三のローマ」なのか?…東ローマ帝国とモンゴル帝国の根深い影響を探る
上月豊久
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に示す媚態表現の真相
上野誠
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(1)老年病科と高齢者の疾患・病態の特徴
頻尿、低栄養、転倒、誤嚥、フレイル…増える老年症候群と高齢者の疾患・病態の特徴
小川純人
「満洲」から考える日本とアジア(1)「満洲」を知る意義とは
「満洲史」はなぜ現代日本でタブー視されるのか?…王道楽土の夢とアヘンなどの裏面から見えてくる現代への教訓
宮脇淳子
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
現代人に必要な「教養」とは?(1)そもそも教養とは何か
教養とは…本質を捉える知、他者を感じる力、先頭に立つ勇気
小宮山宏
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高