培養肉研究の現在地と未来図
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
食糧不足だけではない、「第3の肉」登場への4つの背景
第2話へ進む
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
竹内昌治(東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
食糧難、環境保護などの観点から、そのあり方に見直しを迫られている畜産業界。その状況にあって、近年、技術開発が進んでいるのが「培養肉」だ。味や食感を似せる「フェイクミート」から、本物の肉と同じ筋肉を再現する「リアルミート」まで、培養肉研究の現在地を見ていく。(全5話中第1話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:11分27秒
収録日:2022年10月11日
追加日:2023年1月10日
≪全文≫

●肉を「育てる」時代から「作る」時代へ


―― 皆さま、こんにちは。本日は竹内昌治先生に培養肉についてのお話をいただきたいと思っております。竹内先生、どうぞよろしくお願いいたします。

竹内 よろしくお願いいたします。

―― 今日はまさに先生の研究室からお届けさせていただくということなのですが、まず、そもそも培養肉とはどういうものかというところからお聞きしたいと思います。

 ニュースなどでも先生の研究などがいろいろと取り上げられており、食べられるようになったという研究も出ています。その半面、例えば大豆ミートなど肉に代わるものもいろいろ出てきていると思うのですが、その中で先生が研究されているのはどういうものになるのでしょうか。

竹内 今、食肉はだいたい3世代目に僕らは入ってきていると思っています。

 では1世代目は何だったかというと、いわゆる狩猟の時代で、お肉を食べようと思ったら狩りに出かけて、狩りが成功したらお肉にありつけるという時代だったわけです。

 そうして、だいたい2万年くらい前から毎日お肉を食べていきたいという状態になったので、家畜の文化が出てきました(2世代目)。それが現代でもまだ続いているのです。ただ家畜の文化がこれ以上拡大することがなかなか難しいだろうという状況になっているのです。

―― それはどうしてですか。

竹内 それは後で申し上げるのですが、例えば環境の問題とか、あるいは動物福祉の問題とか、安全性の問題とか、いろいろな要素が組み合わさって、さらにこれから人口増加に伴ってどんどん(食糧を)拡大しなければいけないという中で、家畜がなくなるということはおそらくないと思いますが、そうしたことがなかなか難しい課題として直面しているという状況が現在あるのです。

 家畜が増えないのであれば、お肉をみんなで食べなくすればいいだろうというチョイスが1つあります。あるいはタンパク質をお肉に代わる別のものから摂っていこうということで、例えば大豆ミートとか、あるいは昆虫食とか、そういうものが今、市場には出てこようとしているのです。

 一方で本物のお肉を忘れずに食べていきたいという人は、例えば動物から取ったお肉そのものを食べ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫