培養肉研究の現在地と未来図
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
培養肉が社会で受け入れられるための「3つの課題」
培養肉研究の現在地と未来図(4)「本物の肉」再現への課題
竹内昌治(東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
日進月歩の培養肉研究において、本物と遜色ない肉をいかに培養するかについてはまだまだ課題も少なくない。特に、本物同様の肉の厚みを再現するには技術的な困難がある。肉の構造や味を分析し、その再現を試みる研究の現在と課題を解説する。(全5話中第4話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:14分41秒
収録日:2022年10月11日
追加日:2023年1月31日
≪全文≫

●いかに牛肉の味を再現するか、カギは鉄分にあり


―― 今この培養肉を見た多くの方が思っていらっしゃると思うのですが、先生はこれを召し上がったわけですよね。

竹内 はい。これをそのものではないのですが、別の形のものは食べました。

―― どんな感じなのですか。

竹内 予想はしていたのですが、食感としては期待以上に噛み応えがありました。ゼリー状のものなので、噛んでもすぐなくなっちゃうのではないかと僕は思っていたのですが、意外と残っていて、それは期待とはちょっと違っていました。期待通りだったのは、味がなかったことです。牛肉の細胞を大量に培養して牛肉の組織を作ったのですが、牛肉の味はなかったということです。

 では、牛肉以外の味としてはどういうものがあったかというと、おそらく培養液由来だと思うのですが、しょっぱさです。意外とほのかなしょっぱさがあって、このままご飯につけて食べたらおいしいのではないかという味ではありました。

 あとは、どこから来たのかまだ分からないのですが、うま味がありました。ただ、牛肉の味はなかったので、培養する中でどうやって牛肉の味を出していくかということが基礎研究としての課題なのではないかと思っています。

 その中で重要なのは、やっぱり脂ももちろんあるのですが、鉄分だと思っています。鉄分はまさに赤身にも通じる部分があります。赤身を作るにはどうしたらいいかということで、1つのヒントとしては、例えば培養中に、筋肉を基本的に僕らは動くものとして使っているわけです。そうなると、動きや力をずっとかけた力学的な負荷のあるような状態、あるいは一定の期間負荷をかけたような状態で培養するのがいいのではないかということで、培養中に電気刺激をかけてみました。そうすると、筋繊維の数とかサルコメアの量がグッと増えるということが分かってきました。

 なので、今は電気刺激を例に取ったのですが、いろいろな培養のコンディションを変えることによって筋肉の成熟度が変わってくるのではないかと僕らは思っています。そのあたりを調整していこうというのが1つです。


●分厚い培養肉を作るための課題は「養分の浸透」


―― 今、実際に作ったところから電気刺激などで行うというお話がありましたが、他...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄