培養肉研究の現在地と未来図
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
食糧不足だけではない、「第3の肉」登場への4つの背景
培養肉研究の現在地と未来図(2)培養肉需要の背景
竹内昌治(東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)
培養肉や代替肉、大豆ミートといった「第3の肉」の需要が高まっているその背景にはどのような問題意識があるのだろうか。そこには、将来的な食糧難や環境保護を見据えた社会の危機感がある。畜産業界を取り巻く市場的、倫理的な問題から見えてくる培養肉研究の可能性を解説する。(全5話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:17分10秒
収録日:2022年10月11日
追加日:2023年1月17日
≪全文≫

●「第3の肉」登場の背景にある4つの課題


―― 今、先生の研究の位置づけをお聞きしてまいりましたので、いよいよ具体的に研究がなぜ必要かというところから、どういう課題があるのかというところまでいろいろお話を伺ってまいりたいと思います。

竹内 培養肉や代替肉も含めて、いわゆる「第3のお肉」のようなものが登場した背景は4つあると僕は思っています。1つは人口増加に伴うタンパク質不足(食糧難)。もう1つは環境負荷。3つ目は安全性。そして最後が動物福祉の問題だと思っています。

 例えば、タンパク質不足の話にいきますと、あと30年後、だいたい2050年くらいに人口は100億人くらいになるので、今より30億人くらい増えてきて、いわゆる新興国がどんどんリッチになっていくと考えられています。新興国がリッチになってくると、だんだんとお肉を(もっと)食べるようになるというデータもあります。そうすると、今よりも増えた人口の分だけお肉の供給を増やさなければいけないという状況になるのです。

 お肉の供給を増やすということは、今、唯一できるのが畜産の拡大になるわけです。ただ畜産の拡大というのは、さまざまな課題を抱えているのが現状で、これ以上増やすことはできないのではないかということで、その1つは環境の問題です。

 環境の問題でいきますと、例えば人間が出している温室効果ガスの14.5パーセントくらいが畜産由来だといわれています。これはいろいろ議論がある中でのデータなのですが、畜産(業界)もその状況は理解していて、どんどんそのガスを少なくしていこうという努力ももちろんされているのです。

 例えば、メタンガスが畜産から出てくるのが今、問題になっています。そのメタンガスをできるだけ出さないような飼料を開発するということで、未来永劫ずっと出し続けるということはおそらくないと思うのですが、現状ではそのくらいの割合を畜産が占めています。

 あと、例えば1キロのお肉を作るのに水は1.5万リットルから2万リットルくらい使われているといわれています。また、その1キロを育てるための餌は11キロから25キロくらい使われています。その餌に使われるのが、大豆やトウモロコシのような穀物です。これは人間が食べてもいいようなものを飼料として使っているとい...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
培養肉研究の現在地と未来図(1)フェイクミート市場とリアルミート研究
食肉3.0時代に突入、「培養肉」研究の今に迫る
竹内昌治
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
定年後の人生を設計する(1)定年後の不安と「黄金の15年」
不安な定年後を人生の「黄金の15年」に変えるポイント
楠木新
『貞観政要』を読む(1)長期政権を目指す者の必読書
北条政子も愛読した長期政権のバイブル『貞観政要』
田口佳史
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子