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努力した分は必ず報われる――「教育」という名の環境の力

現代の小児科学と最高の子育て(4)環境の力と教育効果

高橋孝雄
慶應義塾大学名誉教授(医学部)
概要・テキスト
遺伝の「変わらぬ力」に対して、環境には「変わる(変える)力」という特徴がある。また、遺伝の「守る力」に対して、環境は「育む力」という特徴もある。ただし環境の力は不確かで流動的なため、追い風としても向かい風としても作用する。子どもに対してはどう作用するのだろう。(全7話中第4話)
時間:08:21
収録日:2021/07/14
追加日:2021/09/25
タグ:
≪全文≫

●環境の力が示す3つの特徴


 それでは遺伝の力に続いて、環境の力について皆様と一緒に考えてみたいと思います。

 環境の力の特徴は、すでにお話しした遺伝の力と対比させて考えると、遺伝の「変わらぬ力」に対して「変わる(変える)力」と呼べると思います。そして、遺伝子が「守る力」であるのに対して環境の力のすごいところは「育む力」ではないかと思います。

 そして遺伝の力が「変わらずそこにあるけれども、ばらつきをもっている」ことを強調しましたが、環境の力はまさに「不確かで流動的」であるところで、そこがすごいと思います。

 こういった特徴がございますので、もう皆様よくご存じの通り、環境の力は子どもの成長や発達に、あるいはわれわれ大人の生活にも、よくも悪くも作用するということが知られています。

 ここでは「追い風」と「向かい風」にたとえて、二つの大きな話題についてお話をさせてください。

 まず「追い風」になるいい環境として、教育環境について少しお話をさせていただきたいと思います。またその後で、「向かい風」になる環境、これは世の中にいっぱいあります。

 われわれ人類は、新型コロナウイルス感染症という「コロナ禍」を経験し、多くのことを学んだと思います。その逆風の中で、われわれ大人は何を学んだのか、何を経験したのか。そしてその延長として、われわれ大人は子どもたちに何をプレゼントできるのか。そういったことについて考えていきたいと思います。


●環境が追い風として働く「読み書きの能力」


 まずは追い風である教育の力について、お話しさせてください。「読み書きの能力」というお話です。

 子どもの病気の中に「読み書き障害」という病気があります。これは「努力が足りない」「勉強不足だ」ということではなく、生まれつきの素因によるものだというふうに言われています。すなわち遺伝子の力であらかじめ決められた読み書きの能力が、残念ながら劣っている子どもたちがいるわけです。

 こちらのグラフは、横軸が6歳から16歳まで、すなわち小学生と中学生の子どもたちの年齢、タテ軸には「点数」と書いてありますが、読み書きのテストの点数です。このグラフは実際のデータを...
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