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子どもの共感力を育む原動力は「傾聴」という実体験

現代の小児科学と最高の子育て(6)傾聴と説得

高橋孝雄
慶應義塾大学名誉教授(医学部)
概要・テキスト
コロナ禍に限らず大きな災害や社会問題が起きたとき、もっともストレスを感じるのは、政府や有識者といった大人が勝手に決めたことを押しつけられ、それに納得していないときではないか。その苦しさは子どもでも同じこと。ではどうすればいいか。そのときに重要なのは「傾聴」と「説得」である。特に傾聴という実体験はとても重要で、子どもの共感力を育む原動力になる。(全7話中第6話)
時間:08:39
収録日:2021/07/14
追加日:2021/10/09
≪全文≫

●子どもが納得していない状況はいい教育環境とは呼べない


 それでは続いて、コロナ禍に限らず大きな災害や社会問題が起きたときに、“Toxic Stress”がどういう影響を子どもたちやわれわれ大人に及ぼしているか。そういうことについて議論を進めたいと思います。

 コロナ禍を考えていただくとお分かりかと思うのですが、われわれが感じていた言いようのないストレスを、このように表現させていただきました。すなわち、子どもたちの言葉を借りて申し上げれば、「政府や有識者といった大人が勝手に決めたことを押しつけられた、その苦しさ」「われわれは納得していない、という思い」ではないかと思います。

 われわれ大人も思い起こしてみるに、憤りの少なくとも一部は、こういう感情であったのではないでしょうか。「議論に参加していない」「いつの間に決まったの?」「ぼくらは、それを納得してやっているわけではないよ」。これは子どもたちにとっても同じことではないかと思います。

 子どもたちにとって、「押し付けられているんだ」「納得してないよ」と言われる場面は、他にもたくさんあります。例えば「教育虐待」という言葉が、残念ながら新聞でも見受けられる時代になりました。

 親としては良かれと思って「勉強しなさい」「結果を出しなさい」と言う。ただそれがあまりに行き過ぎる。長い期間続くと、それは子どもにとって“Toxic Stress”、すなわち強い向かい風になってしまうわけです。

 「お父さんやお母さんが勝手に決めたことでしょう」「押し付けないでよ」「ぼく(わたし)は納得していないよ」という状況で、長い期間勉強し続ける。これは本当にいい教育環境と呼べるでしょうか。そういう意味では、社会を巻き込む大きな災害が起こったときに、子どもの立場に立って考えてみることは、われわれ大人にとってもたいへん意義深いことだと思うわけです。


●子どもが「自分で決めた」と感じるために重要な「傾聴」


 では、子どもたち自身に「自分で決めたのだな」と感じさせるために、われわれはどんな社会をつくっていけばいいのか。もっと卑近な例でいえば、われわれは両親としてどんな家庭環境をつくっていけばいいのか。

 「勉強しなさい」と言ったときに、子ども自身に「自分の決めたことだから、頑張るよ」と感じてもらうためには...
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