日本の財政政策の効果を評価する
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借金は悪ではない!? どうやって「賢い支出」をすればいいか
日本の財政政策とその効果を検証する(6)「賢い支出」のすすめ
政治と経済
宮本弘曉(一橋大学経済研究所教授)
世界では近年、財政政策が非常に注目を集めている。これは先進国が「セキュラー・スタグネーション」と呼ばれる長期停滞に陥っているからだ。そこからの脱却のためには財政出動が必要なのだといわれているのだが、日本は特に「課題先進国」として財政政策の抜本的な見直しが求められている。大事なことは「賢い支出」(ワイズスペンディング)で、効率的な支出をしていかなくてはいけない。そこで今回は世界的に有名な経済学者の発言を取り上げながら、積極的な財政政策の意義について解説する。(全6話中第6話)
時間:9分34秒
収録日:2023年12月14日
追加日:2024年4月11日
≪全文≫

●なぜ今、財政政策が重要なのか


 ここまで、財政政策の効果について論じてきました。「高齢化が財政政策の効果、有効性を下げる」ということと、「財政政策は雇用のジェンダー平等を実現し得る」という最近の研究結果についてご紹介させていただいたわけですが、最後に、なぜ今このタイミングで、財政政策の効果を再び考えなくてはいけないのかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

 世界では、財政政策がこの10年くらいのあいだ、非常に注目されております。また、今後もその重要性は高まっていくと考えられています。さらにいえば、日本で財政政策の効果を考えるということが極めて重要な局面にきているといえるかと思います。

 記憶の新しいところですと、新型コロナウイルスによるパンデミックです。コロナ禍において、空前規模の財政出動が実施をされたわけです。人々の命や健康を守り、また、経済を支えるために財政出動がなされたわけです。

 IMFによりますと、2020年から2021年の秋までのあいだに、全世界で実施された財政支援の総額は16.9兆ドルに及ぶといわれています。ものすごく大きな金額です。先進国だけではなくて新興国、あるいは途上国においても、財政出動が行われました。

 ただ、コロナ禍の前から、実は財政政策は世界で注目を浴びておりました。これはなぜかというと、先進国が「セキュラー・スタグネーション」と呼ばれる長期停滞に陥っていたからです。そこから脱却するためには財政出動が必要といわれていたわけです。


●専門家による積極的な財政出動を望む声


 世界的に有名なマクロ経済学者に、オリヴィエ・ブランシャール氏という方がいます。この方は現在、ピーターソン国際経済研究所にいらっしゃって、以前はマサチューセッツ工科大学にお勤めでした。また、IMFのチーフエコノミストをされた方でもあるのですが、このオリヴィエ・ブランシャール氏が最近こんなことを言っているのです。

 これはコロナ禍の前までの話ですが、「先進国では、金利の低い状態がずっと続いていました。金利が低い状態ですと、財政政策を行うことのコストがそんなに大きくないのだ」ということです。

 これはどういうことかといいますと、何か財政出動をしようとしたときにお金が必要になるわけです。多くの場合は、国債を発行してお金を作るわけですけれど、金利が低ければ、国債...

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