日本の財政政策の効果を評価する
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
長寿雇用戦略で構造改革、高齢化はピンチではなくチャンス
日本の財政政策の効果を評価する(3)高齢化をチャンスに変える方法
宮本弘曉(一橋大学経済研究所教授)
「財政政策の有効性を低下させる」という高齢化だが、まさに高齢化が進んだ日本社会において、どのようにすれば経済を立て直すことができるのか。一見ピンチに見える高齢化だが、実はチャンスなのだと宮本氏はいう。鍵は「メリハリ」と構造改革である。どういうことなのか。「課題先進国」として世界に先んじて高齢化社会の課題に取り組む日本が取るべき政策を議論する。(全6話中第3話)
時間:8分32秒
収録日:2023年12月14日
追加日:2024年3月21日
≪全文≫

●高齢化社会に必要な「構造改革」とは?


 では、高齢化が財政政策の有効性を低下させるということのインプリケーション(含意)は一体何なのかということですが、いくつかあります。

 まず、日本では大規模な財政出動がずっと行われてきたわけですけれども、本格的に経済が回復しなかったということがあります。その1つの理由として、財政政策の有効性が低下したということが考えられるわけですが、その背景に「高齢化」という大きな経済の構造変化があったということが1ついえるかと思います。

 また、財政乗数が高齢経済において低下しているということは、もし政府が景気を浮揚させよう、経済成長を促進させようとなったときに、従来と同じようなお金を使っていたのでは、昔と同じような効果が望めないということになります。

 逆にいいますと、大規模な財政出動というものをしないと、なかなか経済が反応しないということを意味しているわけです。

 ただ、大規模な財政出動をしましょうとなったときに、それをできる余裕を持っていないといけないわけです。

 景気が悪くなったときに政府支出を増やして、経済を下支えするというのは財政政策の基本ですが、もし大規模な景気浮揚策を打ちたいということであれば、景気がよくなったときに、財政をしっかり健全化させる方向に持っていかなくてはいけません。将来、不況が起こったときに、財政出動ができるようにその準備をしておかなくてはいけないわけです。

 これを、「財政スペースを確保する」という言い方をします。財政に余裕を持っておきましょうということになるわけです。つまり、高齢化が進んだ経済においては、しっかりと財政のメリハリをつけて、引き締めるときには引き締めるということが重要になってくるということになります。

 また、「構造改革」が非常に重要になってきます。というのも、財政乗数が下がっているのであれば、それを上げるようにしてあげればいいということになるわけです。

 具体的には、高齢化によって財政政策の有効性が低下する理由は、「労働力が低下する」ことです。逆にその労働力をある程度確保してあげれば、財政乗数はそんなに低下しない可能性があるということです。

 ですから、高齢者の雇用をうまく活用するような構造改革が望まれるわけです。


●労働生産性に合わせた賃金体系こそが高齢者雇...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦