●高齢化社会に必要な「構造改革」とは?
では、高齢化が財政政策の有効性を低下させるということのインプリケーション(含意)は一体何なのかということですが、いくつかあります。
まず、日本では大規模な財政出動がずっと行われてきたわけですけれども、本格的に経済が回復しなかったということがあります。その1つの理由として、財政政策の有効性が低下したということが考えられるわけですが、その背景に「高齢化」という大きな経済の構造変化があったということが1ついえるかと思います。
また、財政乗数が高齢経済において低下しているということは、もし政府が景気を浮揚させよう、経済成長を促進させようとなったときに、従来と同じようなお金を使っていたのでは、昔と同じような効果が望めないということになります。
逆にいいますと、大規模な財政出動というものをしないと、なかなか経済が反応しないということを意味しているわけです。
ただ、大規模な財政出動をしましょうとなったときに、それをできる余裕を持っていないといけないわけです。
景気が悪くなったときに政府支出を増やして、経済を下支えするというのは財政政策の基本ですが、もし大規模な景気浮揚策を打ちたいということであれば、景気がよくなったときに、財政をしっかり健全化させる方向に持っていかなくてはいけません。将来、不況が起こったときに、財政出動ができるようにその準備をしておかなくてはいけないわけです。
これを、「財政スペースを確保する」という言い方をします。財政に余裕を持っておきましょうということになるわけです。つまり、高齢化が進んだ経済においては、しっかりと財政のメリハリをつけて、引き締めるときには引き締めるということが重要になってくるということになります。
また、「構造改革」が非常に重要になってきます。というのも、財政乗数が下がっているのであれば、それを上げるようにしてあげればいいということになるわけです。
具体的には、高齢化によって財政政策の有効性が低下する理由は、「労働力が低下する」ことです。逆にその労働力をある程度確保してあげれば、財政乗数はそんなに低下しない可能性があるということです。
ですから、高齢者の雇用をうまく活用するような構造改革が望まれるわけです。