お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
なぜ銀行が国債を買うとお金の総量が増えるのか
第2話へ進む
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
政治と経済
養田功一郎(元三井住友DSアセットマネジメント執行役員/YODA LAB代表/金融・経済・歴史研究者)
日本経済が低迷する原因は何か。大きなポイントとして「お金が回っておらず、死蔵されてしまっていること」が挙げられる。そもそも、お金が市中にどのように流通し、どのような役割を果たしていくのかを理解しなければ、経済を正しく理解することはできない。経済のしくみを理解するうえで欠かすことができないメカニズムと、日本経済に隠された課題に肉薄する講義シリーズ。第1話では、社会でお金が流通する仕組み、特に、「信用創造」「預金創造」と呼ばれる銀行がお金を生むことについて解説する。(全6話中第1話)
時間:11分23秒
収録日:2024年12月4日
追加日:2025年2月22日
カテゴリー:
≪全文≫

●流動性預金からみえるマネーの「死蔵」


 今回は、日本全体でお金を回してくことの大切さについてお話しします。実はこれも広い意味で経済・金融政策といえると思うのですが、そういう話をしていきたいと思います。

 さて、現在日本では、2013年以降の大規模金融緩和の解除、正常化が行われています。その中で、金利が復活する社会への回帰という話と同時に、インフレへの懸念や財政再建の必要性、所得向上策など、個々にはさまざまな意見や考え方が聞かれますが、日本全体で総合的には経済・金融政策をどうすればいいのかについては、あまり多く語られていないように感じます。

 こうした中、今回は大規模金融緩和の次に必要なこと〈経済・金融政策2.0〉と題してお話したいと思います。

 さて皆さま、冒頭でみていただきたいグラフがあります。このグラフは個人・法人の預金残高を種類別に大まかにお示ししたものです。

 緑色の部分は定期預金など、赤い部分は流動性預金――これは普通預金など給与振り込み口座として使われ、いつでも引き出せる種類の預金のこと――ですが、この流動性預金はアベノミクスが始まる直前2012年末、個人・法人合わせて500兆円程度ありました。

 そして、アベノミクスやコロナショックを経て、2023年末ではこの流動性預金は1000兆円程度と、約500兆円増加しています。

 さて、このお金はいったいどこで生まれたものでしょうか。アベノミクスで大規模金融緩和したのだからお金が増えているのだろうし、その中で儲かった企業のお金が増えているのではないか、と思う人は多いでしょう。

 しかし、右の表をみていただくと、実際には個人流動性預金のほうが増えています。そして、その増え方は、2000年代前半などに比べて加速しています。そうした実感は皆さまにあるでしょうか。

 一方、GDPというモノやサービスの付加価値(これは利益といっても良いものですが)の総量を表す数字は、その間500兆円程度で横ばいです。赤い(点)線です。

 ここからみえることは、お金の増え方は以前よりペースが速いのに日本が生み出している付加価値の総量は変わっていないということです。逆にいえば、付加価値の増加とあまり関係のないお金が増えている。あえていえば退蔵、死蔵しているマネー...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(1)国際秩序の転換点と既存秩序の崩壊
経済秩序や普遍的価値観を破壊し、軍事力行使も辞さぬ米国
佐橋亮
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀
自民党総裁選~その真の意味と今後の展望
「マスコミ報道」では見えない自民党総裁選の深い意味
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(2)政府債務と預金残高の背景
なぜ日本の所得水準は低いのに預金残高は大きいのか
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(8)満州事変と世界大恐慌
「100年戦争」と考えて戦争に突入した日本の現実
片山杜秀
弥生人の実態~研究結果が明かす生活と文化(1)弥生時代はいつ始まったのか
なぜ弥生時代の始まりが600年も改まった?定説改訂の背景
藤尾慎一郎
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子