●流動性預金からみえるマネーの「死蔵」
今回は、日本全体でお金を回してくことの大切さについてお話しします。実はこれも広い意味で経済・金融政策といえると思うのですが、そういう話をしていきたいと思います。
さて、現在日本では、2013年以降の大規模金融緩和の解除、正常化が行われています。その中で、金利が復活する社会への回帰という話と同時に、インフレへの懸念や財政再建の必要性、所得向上策など、個々にはさまざまな意見や考え方が聞かれますが、日本全体で総合的には経済・金融政策をどうすればいいのかについては、あまり多く語られていないように感じます。
こうした中、今回は大規模金融緩和の次に必要なこと〈経済・金融政策2.0〉と題してお話したいと思います。
さて皆さま、冒頭でみていただきたいグラフがあります。このグラフは個人・法人の預金残高を種類別に大まかにお示ししたものです。
緑色の部分は定期預金など、赤い部分は流動性預金――これは普通預金など給与振り込み口座として使われ、いつでも引き出せる種類の預金のこと――ですが、この流動性預金はアベノミクスが始まる直前2012年末、個人・法人合わせて500兆円程度ありました。
そして、アベノミクスやコロナショックを経て、2023年末ではこの流動性預金は1000兆円程度と、約500兆円増加しています。
さて、このお金はいったいどこで生まれたものでしょうか。アベノミクスで大規模金融緩和したのだからお金が増えているのだろうし、その中で儲かった企業のお金が増えているのではないか、と思う人は多いでしょう。
しかし、右の表をみていただくと、実際には個人流動性預金のほうが増えています。そして、その増え方は、2000年代前半などに比べて加速しています。そうした実感は皆さまにあるでしょうか。
一方、GDPというモノやサービスの付加価値(これは利益といっても良いものですが)の総量を表す数字は、その間500兆円程度で横ばいです。赤い(点)線です。
ここからみえることは、お金の増え方は以前よりペースが速いのに日本が生み出している付加価値の総量は変わっていないということです。逆にいえば、付加価値の増加とあまり関係のないお金が増えている。あえていえば退蔵、死蔵しているマネー...