クライン『ショック・ドクトリン』の真実
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
天安門事件や南米の独裁者への評価分析も間違いばかり?
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(3)天安門事件と独裁者とクラインの矛盾
柿埜真吾(経済学者/思想史家)
ミルトン・フリードマンの「ショック療法」の議論を曲解し、的外れな批判を展開するナオミ・クライン。その議論は、中国の歴史的事件である天安門事件へと波及する。民主化を支持していたフリードマンを保守派として批判したクライン。その主張の矛盾は、ベネズエラ、ニカラグア、エクアドルなど南米の独裁者に対しても同様。今回はそれぞれの具体的な矛盾について解説を進めていく。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:13分39秒
収録日:2023年7月20日
追加日:2023年9月8日
≪全文≫

●天安門事件にまつわるクラインのデマ


―― ちょうど前回までに、先生からご紹介いただいた話は南米の話が多かったので、日本人にはややなじみが薄いかもしれませんが、日本人がよく知っている例でいうと、中国の天安門事件もフリードマンの陰謀だというようなことが書いてあるということなのですね。

柿埜 ええ、もうクラインのでたらめというのは、南米に関しても本当にひどいものです。はっきりいって、陰謀本の類に書いてある「CIAの陰謀」というものを、全部、真に受けた内容なので、到底まともな本とはいえないのですけれども、中国に関してのクラインのでっち上げは本当に信じられないものです。はっきりいえば、被害者と加害者をさかさまにしているのです。

 クラインによれば、天安門の学生デモというのは市場経済に反対する人たちのデモで、シカゴ学派に反対するデモだったというような書き方をしています。天安門事件は鄧小平が市場経済化を進めるために起こしたショックで、市場経済が一気に進んだと。それで、フリードマンが天安門事件の前年の1988年に中国を訪問して、チリと同じアドバイスをし、それが天安門事件の武力弾圧につながったのだというのです。鄧小平が自由をはく奪してフリードマン主義を貫こうとした結果が、天安門事件なのだというわけです。

 これは現実とまったくかけ離れた、完全なフィクションです。

 現実の天安門事件はまったく逆で、実は経済改革を一生懸命進めていたのは、胡耀邦(こようほう)という人と趙紫陽(ちょうしよう)という、どちらも中国の総書記を務めた政治家です。彼らが進めようとしている政策に、「経済自由化に関しては同調する」というのが鄧小平の姿勢だったのです。しかし(鄧小平は)、政治の自由化、つまり民主化に関しては否定的だったわけです。

 胡耀邦が経済改革と政治改革を進めようとしたことに対して、共産党の中には保守派がいて、ものすごく反発していました。結局、胡耀邦が急進的すぎるということに鄧小平も同調。「胡耀邦はブルジョア自由化の手先である」というようにいわれて失脚してしまうわけです。

 胡耀邦が失脚した後、経済改革も政治の民主化もどちらも止まってしまいました。皆さんはクラインの本からではなくて、普通に常識として知っておられるかもしれないのですが、胡耀邦...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
衰退途上国ニッポン~その急所と勝機(1)安いニッポンと急性インフレ
世界で一人負け…「安い国」日本と急性インフレの現実
宮本弘曉
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(1)米国の過激化とそのプロセス
トランプ政権と過激化した米国…MAGA内戦、DSAの台頭
東秀敏
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(12)自転車の青切符と「法と自粛」
【10minで考える】自転車の青切符と「法と自粛」
テンミニッツ・アカデミー編集部
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
『「甘え」の構造』への誤解…甘えはダメなものなのか?
與那覇潤
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(5)ゴールドや暗号通貨への評価
ゴールドやビットコインへの評価は?…現代社会の写し鏡
養田功一郎
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(2)厳格な一神教と選民思想
一神教とは、選民思想の真相とは…ユダヤ教の「最終目的」を考える
鶴見太郎
天皇のあり方と近代日本(1)「人間宣言」から始まった戦後の皇室
皇室像の転換…戦後日本的な象徴天皇はいかに形成されたか
片山杜秀
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(6)日本人の当たり前と山本七平の違和感
日本の異様さ…フィリピンから復員した山本七平が驚いたこと
與那覇潤
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博