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天安門事件から30年、なぜ中国は体制崩壊を免れたのか

天安門事件から30年~冷戦終焉と中国の経済成長~

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
今年2019年は天安門事件から30年ということで、あの事件の意味や影響、その後の中国の体制方針や経済について解説する。天安門事件から2つの大きなテーマが導き出されると曽根氏は言う。1つは天安門事件が冷戦終焉にある種の役割を果たしたということ。もう1つは、ソ連や東欧圏の体制崩壊を目にしながら中国はそれを免れたばかりか、大きな経済発展を遂げたということ。なぜ、中国はソ連・東欧とは違う道をたどることができたのか。
時間:14:56
収録日:2019/07/03
追加日:2019/08/25
≪全文≫

●天安門事件から導きだされる2大テーマ-冷戦終焉と中国の経済成長


 今年2019年は天安門事件から30年たちました。世界史の中で非常に大きな役割、大きなインパクトを与えた天安門事件ですが、実は4月にテンミニッツTVで「平成の30年」についてお話をしました。平成の30年は日本人にとっては意味のある30年ですが、世界史の中ではそれほど大きな意味はありません。

 むしろ、天安門事件の後、中国は大きく変化しました。「エレファントカーブ」についての講義の時、中国の中間層が増加したため、エレファントカーブにおける中国ファクターは大きいというお話をしました。

 それから、図を見ていただくと分かると思いますが、天安門事件の後の30年の中国の経済発展というのは目覚ましいものがあり、実質GDPは世界第2位、購買力平価でいくと世界1位となります。

 では、ここで大きく2つ問題を考えてみます。1つは冷戦終焉に果たした天安門事件の役割についてです。もう1つは、ソ連、あるいは東欧圏の体制崩壊ということを目にしていながら、なぜ中国は体制崩壊を免れたのか、そして、経済成長をしたのか、ということです。それが今回の大きなテーマです。


●天安門から吹いた東風がソ連・東欧へ


 私の個人的な経験で申し上げれば、ハーバード大学にいた時に、社会学者のエズラ・ヴォーゲル先生としばしばお会いすることがありました。特に外国人、あるいは中国人の学者などがハーバードに訪問した時に、一緒に中華料理店でお話をする機会があったり、またはセミナーの前の食事に招かれて、会話をする機会があったのです。

 そこで、天安門事件について中国の学者にこう言ったことがあります。「なぜ、暴動に対して戦車を出したのか」と。その時の答えは非常に単純で、放水車や催涙ガス、機動隊の装甲車のようなものがなかったからだという返事でした。佐々淳行さん(初代内閣安全保障室長、元警察・防衛官僚)にお会いした時、彼は「天安門事件以降に中国に行って、いわゆる暴鎮(暴動を鎮圧する機動隊の活動)についていろいろ教えたことがあります」と仰っていました。

 ヴォーゲル先生に私の1つの仮説、考えを申し上げました。その時は、「天安門事件というのは、非常に強い東風(偏西風の逆)が吹いて、ソ連・東欧圏の体制崩壊の原因になった。その風がもう一遍、中...
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