●シーパワーでありつつ大陸国家でもあるアメリカ
―― 続きまして、先生にご用意いただきましたのが「アメリカの地政学的優位」というところでございます。
小原 具体的に、この3つの国(アメリカ・ロシア・中国)について地図で改めて見てみると何が見えてくるか、川上さん、何か分かりますか。
―― 書いてあるのは「世界の航路」ということですけれど。
小原 はい。
―― 色がついているところが、船が通っているところですね。
小原 そうですね。これは、先ほどいったように、私はできればアメリカが真ん中にある地図を持ってきたかったのです。
―― なるほど。
小原 ところが、それを探したのですけれど、ないのです。アメリカを真ん中に置いたように想像してみてください。そうすると、左に太平洋があって、その向こうに日本を含むアジアが広がるわけです。アジアといえば、世界の経済の中心がヨーロッパなど、太平洋から大西洋に広がってきて、APECもそうなのですけれど、中国の台頭、あるいはインド、東南アジア、日本も含めて、こちらに重心が移ってきたとよくいわれます。
もちろん、大西洋との関係は以前からすごくあって、つまり大西洋、太平洋というこの大変なシーレーン、あるいは交易が行われるようなこの2つの大海の真ん中に、実はアメリカは存在するのだということなのです。
つまり、ランドパワーとシーパワーの違いとよくいわれるわけですけれど、シーパワーというのはある意味で、大海、海洋です。
実は、海洋というのは誰のものでもないのです。今でも、国連海洋法条約というものがありますけれど、実際には自分の領海、これは主権が及ぶところです。それでさらにその外に、排他的経済水域の200海里がもちろんあるわけですけれど、要するにここには、制限された主権的な権利しか国際法で決められたものしかないわけです。さらにいくと、そのそばには広い公海があって、これは「公海の自由」といって、誰もが平等に使えます。「グローバルコモンズ」ともいいますけれど、みんなの共有財産なのです。
そういった広い海を、シーパワーは自由に使って、交易等を通じて莫大なエネルギーあるいは活力、経済的な資産も含めて富をそこから蓄えてくることによって、パワーとして台頭したわけです。これは古代アテナイからそうなの...