●米中の緊張関係の裏には両国の「飽和」がある
あけましておめでとうございます。2019年も、テンミニッツTVをよろしくお願いいたします。
今年の予測ということはもちろんできませんが、米中の緊張関係が非常に重要な背景になることは間違いないでしょう。どうしてこういう状況になっているかというと、一つはアメリカが「普通の国」になってきたということだと思います。
アメリカは、イギリスの人たちが入植して以来、原住民の方の問題を別にすると、「ニューワールド」であり続けました。そこは、資源にも気候にも恵まれた素晴らしい肥沃な土地です。開発がどんどん進む中で「ゴールドラッシュ」のような、「西へ西へ」と皆が目指す動きが起き、カリフォルニアに到達したことで「未開の地」はなくなりました。その後、エジソンに代表されるような産業が起きて、発展が続きます。
もともと人口が少ないところでしたから、移民をどんどん受け入れてきました。それらが飽和したということです。飽和したために、「壁」をつくるというのです。2018年、ホンジュラスから1万人近くが押し寄せましたが、200年前なら、それもどうということはない時代でしたし、そもそもホンジュラスからアメリカに行く理由すらなかったかもしれません。アメリカが「普通の国」として飽和したために余力がなくなってきた。これが基本的背景としていえることだと思います。
一方、中国は非常に貧しい国であったのが、鄧小平の登場以来、大きな人口に支えられて急速に発展してきました。おそらく今まで世界で最もスピードのある発展をした国は日本だったと思いますが、その後(大きさは別として)韓国が続いて、次が中国です。中国の発展スピードは、日本や韓国をも上回る速さです。
ある意味では「何をやるべきか」が分かっており、工業を行い、そこに情報技術をプラスするということで、これらは、前を走った人たちを見てやっているわけですから、速いのも当然です。しかし、もちろん10数億人の国を破綻させずにそれを成し遂げたのは大したことです。その中国にも遠からず、経済成長の飽和が見えてきました。
●自動車の販売台数が物語る発展と飽和
日本がたどった道を考えてもよく分かります。戦後、復興する時には衣食住が足りないので、はじめに作るのは農業のための肥料、着るための繊維などで、そうした基礎産業が経済を引っ張りました。その後、テレビ、冷蔵庫、洗濯機といった家電製品をみんなが必死で買い求め、高度成長期が始まります。最後が自動車です。われわれのような普通の人が自動車を買えるようになり、欲しい人がだいたい車を持ったあたりで、先進国になって高度経済成長が終わる。これは先進国の全てがたどった道です。
中国も、もうそこまで近づいていることが見えてきています。例えば、中国の自動車の売上台数は、2017年すでに2800万台に達しています。飽和状態を迎えると、廃棄される台数と新しく売れる台数が釣り合いますから、そのことが人口に比例してきます。例えば、日本では年間500万台の新車が売れますが、中国の人口は日本の11倍ですから、5500万台売れると飽和と計算できます。2800万台に達したということは、半分を超えたわけです。しかし、おそらく倍まではいかないだろうと考えられます。
アメリカの車の台数を見ていても分かるのですが、10年前には100人に45台で、二人に1台に近い数だったのが、今は38台に減りました。若い人たちが車を持たなくなっていることとともに、シェアリング・エコノミーが明確に影響を与えてきているからです。
中国の自動車市場が3000万台で止まるのか4000万台で止まるのかは分かりませんが、おそらく10年たてば飽和しているだろうということが見えてきているわけです。ですから中国も、毎年税収が増え、新しいところにどんどんお金を回せるというような、発展している国ゆえのメリットをまもなく失うことになります。
●自国主義の主張は第二次世界大戦前のブロック経済に酷似
そういう形で、アメリカにも中国にもそれぞれ、これ以上譲れない状況が来て、両国とも「普通の国」になってきました。これが米中の問題なので、これから非常に悪くなる可能性があります。というのは、アメリカが「アメリカ・ファースト」という自国主義を打ち出し、世界中が追随しているからです。最近、ブラジルの新大統領もとてつもないことを言っていますし、オーストリアやイタリアも同様です。フランスはエマニュエル・マクロン氏が頑張りましたが、マリーヌ・ルペン氏のような(移民反対を唱える)人も出てきましたし、BREXITの原因の一つもそこでしょう。ドイツのアンゲラ・メルケル氏も非常に苦しい状況になっています。
世界の国のそれぞれが自国主義に陥り出しています。これは実は、...