●日本の課題は「少子高齢化」ではなく「少子化」
さて、米中の緊張関係という非常に大きなリスクを背景に、世界の資本はESG投資の方向へ向かっています。そのような中、日本はどうしていこうかということについてお話しします。
もちろん、国際的にはTPPやAPECなどの問題があり、日本の利益を損なわない対外関係とすることが極めて重要です。それは言うまでもないこととして、私は、国内の本質的な問題を解決すべきだと思います。課題解決先進国となることです。その背景としては、日本が課題先進国であることが基本にあり、日本が自分の課題を解決すれば、それは世界のモデルを示すことになっていくからです。
では、日本の課題とは何なのか。いろいろあるのですが、やはり最大の課題は「少子化」です。「少子高齢化」といわれるけれども、みんなが長く生きたいつまり人類の夢が実現したということであり、長寿化は悪いことではありません。問題は、人口の年齢構成のバランスがくずれることであり、少子化こそが問題なのです。
●少子化の構造的問題と東京の低い出生率
日本は、少子化に対して構造的な問題を抱えています。今、平均出生率は1.4を少し超えるところ(2017年)です。一人の女性が生涯に産む子どもの数が2.07、つまり二人の赤ちゃんを産む状況でないと、日本の国がなくなってしまうわけですから、少子化は克服しなければなりません。
ところが、東京は日本国内でも子どもの生まれる数が一番少なく、一人当たり出生率は約1.2(2017年)という状況です。周りを見ていても、東京で二人以上の子どもを育てるのは大変です。家の広さの問題もあれば、子どもが遊ぶ場所が東京では非常に限られているということもあります。そして、教育費が高い。そのように、さまざまな問題があって、東京の出生率はなかなか上がりません。
ところが、人口が増えているのは横浜なども含めた東京「圏」だけです。どういうメカニズムかというと、子どもの生まれる数の比較的多い地域から、東京へ若い人が来るけれども、来るとなかなか帰らない。そうした非常に単純な理由です。その結果、東京は今のところ経済も非常にうまく回って好況ですが、地域は大変です。大変なだけではなく、このままでは子どもを産める世代の女性が本当にいなくなってしまいます。