●大都市圏の高齢者の数は、今まで以上に激増する
今までお話ししたのは、都市圏、特に首都圏と地方の、総人口における関係です。これを今度は特に高齢者に注目してみると、何が起こるでしょうか。
このスライドは、(沖縄のところは色が付いていますが)65歳以上の人口がどう変化してきたかです。横の棒グラフでいうと、2010年が黄色い方で、2040年が赤い方です。ちなみに棒グラフの47都道府県の順番は2040年における高齢者の多い順に並べたものです。何を申し上げたいかというと、2010年から2040年に高齢者の数がどうなるかということです。日本全体ではどんどん増えていきますが、どこで増えるかというと、東京都、神奈川県、大阪府、愛知県、埼玉県、千葉県、北海道、兵庫県、福岡県の順で、特に首都圏では明らかに高齢者の数が増えてくることになります。
中でも特に東京都の場合ですが、2010年に270万人ほどだった65歳以上の人口が、2040年には約420万人ですから150万人ほど増えます。そして、神奈川県、埼玉県、千葉県と合わせますと400万人ほど、65歳以上の人口が増えるということになります。
他方、人口の少ない県の場合、地図で青くなっている秋田県、島根県、高知県は、65歳以上の人口がむしろ減少します。これは前回もご説明した通りです。
では、これからの高齢化において何が問題なのでしょうか。これまでは普通、高齢化というと、農村部において若い人たちが流出し、高齢者の比率が高くなってくることが挙げられます。それに対して社会保障をはじめ、どういう形で高齢者をケアするかが課題だったのです。
これからは何が起こるかといいますと、首都圏とか近畿圏という大都市圏において高齢者が、これまでとは比較にならない規模で、激増するという事態に直面します。どのような形でそういう人に対して、きちんと医療や介護など社会保障のサービスを提供していくかが、非常に大きな課題となるでしょう。
このグラフは、それを視覚的に分かりやすく表した3次元の棒グラフになります。左側の年次は先ほどのグラフと同様1950年から2040年まで、ほぼ100年間にわたる年代のことで、右側も先ほどと同様の理由で2040年における高齢者の絶対数の多い都道府県を右端から順番に並べたものです。右端から東京都、大阪府、神奈川県の順になっています。
昔は高齢者が多いといっても左の棒グラフのように低いレベルだったのですが、これから右側の棒グラフのように高いレベルになってきます。このことがおそらく、わが国における、さまざまな意味での社会保障の財政的な負担、あるいは実質的な医療・介護の労働力の問題に結び付いてくるだろうと思います。
●都市部の核家族化の現状と医療の問題
特に都市部の場合にはまた別な問題も発生してきます。人口の減り方としては、75歳以上の人口の増減状況を見ているわけですが、高齢者の場合、医療・介護の施設をどのような形で配置していくかということが重要になります。現在のところ、赤いところが、人口増加率が非常に高いのですが、先ほどのグラフを地図上におよそ300ある医療圏単位でプロットしたらどうなるかという図になります。
これは首都圏に焦点を当てて、そこでどのような形で高齢化が進むかを表したものです。このスライドでも赤や茶色など濃い色の方が、高齢者の絶対数の増加率が多いということです。65歳以上になりますと皆同じような色になりますので、スライドは75歳以上にしてあります。2010年から40年の間に75歳以上の人口がどれくらい増えるのかということがかなりきれいに見て取れますが、都心部を中心にしてドーナツ状に高齢者の固まりが現れることが分かります。
また、例えば同じ千葉県でありながらも、銚子や房総半島の南の方ですと、むしろ高齢者の数が減ってきます。一方、都市部の高齢者の人たちはどういう人たちかといいますと、前回もお話したように、高度経済成長の時に集団就職などの形で若い世代の人たちが移り住んできて、そのまま住み着いた人たちです。
そうした人たちが高齢化すると、東京都心に住むことはできません。つまり、都心は満杯になってしまったので周辺の都市部の団地あるいは一戸建ての住宅地に住むようになったという人たちがそのまま高齢化してくることになるのです。これまで想定されていた状態と違い、これからの都市部地域の高齢者の方、つまり2025年には団塊の世代の方は皆さん、75歳以上の後期高齢者になるわけですが、その多くの方が核家族です。高齢者の単身か、夫婦の方が多く、さらに住まいの形状もURの団地や一戸建ての住宅...