●歴史上、初めて急速に人口が減少する日本
津田塾大学総合政策学部の森田朗です。今日は少子高齢化・人口減少の社会とこれからのわが国のあり方についてお話しします。
これからわが国の人口は、どのように長期的に変化していくのでしょうか。これから申し上げますのは、日本の歴史上、初めて急速に人口が減少するということです。そのために私たちの考え方も従来の右肩上がりの発想を捨て、人口減少に応じた、あえて言うならば、ダウンサイジングの考え方を取り入れることが重要ではないかと思います。
このグラフは紀元600年から2100年ぐらいまでの非常に長期にわたるわが国の人口の推移を表したものです。もちろん古い時代については推計になりますが、このグラフを見ますと、わが国の人口はちょうど1600年、関ヶ原の戦いの頃までは徐々に増えていきます。しかし、あまり変わらない状態で、1600年にはだいたい1227万人ですから現在の10分の1の人口にすぎなかったわけです。
それが江戸時代に入り、前期には社会が非常に安定していたためか人口が3倍近く増えていきます。その後はしばらく停滞した状態が続きますが、19世紀の後半、特に明治維新が起こってからはこのグラフに見られるように急速に人口が増加します。そして、1960年代には1億人を超え、国勢調査では2010年に1億2806万人となり、わが国の人口はピークに達します。
しかし、その後は、グラフの紫の線が示しますように、右肩下がりといいますか、フリーフォールのような形で急速に人口が減少していくと推計されています。
人口推計の場合には、非常に楽観的に見る高位推計とその逆の低位推計、真ん中の中位推計という、3つの推計値が使われることが多く、人口は通常、中位推計が使われますが、グラフから明らかなように、どの推計値を取ってもわが国の人口は急速に減っていきます。
このグラフからさまざまなことが読み取れますが、2つだけ申し上げます。1つは、2010年まで短期的には増減がありましたが、わが国の人口はずっと右肩上がり、増え続ける傾向にあったことです。それが2010年をピークにして長期的に減り始めます。これはわが国の歴史上、初めての経験ということになります。
それに伴いまして、私たちの発想も切り替えていかなければならないと思います。これまでは右肩上がり...