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欧州よりもアジアで急速に高齢化が進んでいる

人口減少と日本の未来(4)人口ボーナスと経済成長の関係

森田朗
津田塾大学総合政策学部教授
情報・テキスト
そもそも、なぜ人口が減少してはいけないのか? 減少しても豊かに暮らすことはできないのだろうか。この素朴な疑問に対して、津田塾大学総合政策学部教授の森田朗氏は「人口ボーナス」と「人口オーナス」という考え方を提示し、人口減少期に経済成長は見込めないと述べる。(全7話中第4話)
≪全文≫

●従属人口指数は戦後に少なくなり、高齢化と共に多くなる


 世界の人口の動きを見てきましたが、人口が減ったとしても経済成長を続けていくことができるならば、私たち日本社会は十分、皆さん幸せに豊かに暮らしていけるのではないか、という考え方もあるかと思います。しかし、そのことについて、果たして「人口ボーナス」という現象がうまくいくのか、またそのように期待通りに成長が実現するかというと、それはかなり難しいのではないかというメッセージが(世界の人口の動きから)示されているのです。それがどうして起こるかを次にお話ししたいと思います。



 スライドに「人口ボーナス」と「人口オーナス」と書きましたが、このグラフは何を表しているかというと、上の線は、右下の式にある「従属人口指数」という指標です。この指標は、分母に15歳から65歳までの生産年齢人口を置き、分子に15歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口の和を置いて割った値、つまりその比率を表しています。これはどういうことかといいますと、簡単にいえば、年少人口と老年人口は支えられる世代であって、生産年齢人口の方は支える世代であるということです。したがって、この指数が少ないということは支えられる人が少なく、逆にこの指数が上がってくると支えられる人が増えるわけですから、支えることの負担が社会で大きくなってくるということです。

 これを19世紀の終わりから2100年まで、先ほどと同じくらいのタイムスパンでずっと見ていくと、スライドのような線になります。戦前はスライドにありますように、従属人口指数がだいたい60から70、要するに10人で6人から7人の子どもとお年寄りを支えていました。人口構成がピラミッド型になっていますから、明らかに子どもたちの方が従属人口として多かったということになります。

 それが戦後、年少人口のピークを過ぎてから少子化が始まります。そうしますと、この従属人口指数が急速に下がってきます。なぜかといいますと、少子化で子どもが減ってくるわけですが、他方でお年寄りが増えるわけではありませんから、お年寄りが少ないままで子どもが減り、つまり分子が小さくなったためで、こういう形になっていったということです。

 スライドに谷が2つありますが、最初の谷は何かというと、団塊の世代の人たちが年少人口から生産年齢人口、要するに分子から分母に移ったために下がっているというものです。2つ目の谷はいうまでもなく、団塊ジュニアの世代によるものということになります。

 ところが1990年代以降になり、何が起こるかといいますと、皆だんだんと長生きするようになり、高齢者が増えてきます。一方、子どもの数はさほど増えませんから、高齢者の増加によって従属人口指数が上がってきます。現在ですとこの辺り(だいたい戦前の60から70の間)ですが、これがどんどん上がってきて、高齢化のピークが来る2040年代、そしてそれ以降になりますと、100近くになってきます。要するに1人で1人のお年寄りか子どもを支える時代が来ると考えられるわけです。


●高度経済成長は、人口ボーナスの時期に重なる


 このグラフから何が読み取れるかというと、谷の部分で何が起こったかということと関連します。結論から申しますと、ちょうどわが国の経済の高度成長は、谷の時期に重なります。そのことを指し示しますが、谷の部分は「人口ボーナス」ということで非常に得をしたことになり、その後、「人口オーナス」とした形で負担が増えてきたといえましょう。

 なぜそのことを問題にするかというと、人口ボーナスの部分で経済成長が起こったわけですが、わが国は戦後、平和な国家をつくり、そこで国民が努力をして一生懸命勤勉に働いて、技術開発をして、長期の高度経済成長を達成したといわれてきたこともあるからです。

 ですが、人口という観点から見る限りはそうではなく、もちろんそれもあるかもしれませんが、その期間に関していうと、生産年齢人口の人たちが生み出す富のうち、若い世代と高齢者の世代を支えるために使う部分が少なくて済んだということです。余剰の部分をいわば成長のための投資に向けることができ、そのメカニズムが働いたために経済成長が起こりました。したがって、分子である年少人口と老年人口の方が大きくなると、成長はおのずから鈍化してきます。あるいは止まってくるといえると思います。


●従属人口指数と経済成長率には相関がある




 そのことと成長との関係はどうかという点に関して見たのがこのグラフです。これは経済成長率がどう変わってきたかということを見るグラフですが、1956年から1973年は9パーセントです。これがどの時期に当たるかといいますと、ちょうど前の...
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