●幼児が多く老人が少ない人口ピラミッドの構成
前回、日本の人口が減少していると申しましたが、どうして減少し続けるのでしょうか。そして、年齢ごとの人口構成を表した上の図をよく「人口ピラミッド」と呼びますが、なぜピラミッドと呼ぶのでしょうか。その理由を明らかにすることで人口減少のメカニズムがご理解いただけると思います。
ピラミッドという以上、上がとんがった三角形を想定しますが、それに近いのは1965年の人口の図です。それが2015年、2040年、2065年と、だんだん下がすぼんで、つぼ型の形になっていきます。しかもそれがだんだん細くなっていきます。
なぜこのようになるかといいますと、これは上の模式図を使って説明した方がお分かりいただけると思いますが、人類の歴史は長い間、人口構成はこういう形状を取っていました。
ある年に子どもがたくさん生まれたとしても、まだ医学が発達していない、栄養状態が悪い、あるいは病気やけが、その他戦争もあるかもしれませんが、そうしたいろいろな要因で人口が減ることになります。したがって、70歳くらいまで長生きする人は非常に少なかったのです。それまでに毎年、どんどん亡くなっていったということです。
それが医学の発達、あるいは経済の成長により栄養状態が良くなり、あるいは衛生についての知識を皆さん持つようになってから、人口構成の形が上のような形で変わっていきました。
生まれたときの人口がさほど減らなくなったということです。幼少期もそうですし、年少人口の時代もそうですし、働き盛りの生産年齢人口のときでも減りません。さすがに、70歳からは、グラフにあるように傾斜しており、亡くなる方はだんだんと増えていきますが、それまではあまり人口が減らないという状態が続きます。
ここから何が言えるでしょうか。わが国の人口は前回も申し上げましたように、2010年までずっと増えてきました。一方では少子化が始まっていました。それにもかかわらず、なぜ人口は増えてきたのかといいますと、かつては亡くなっていた方が亡くならなかったからで、そのために人口が増えてきたということです。生まれる方と亡くなる方がいて、その差し引きから人口が増えたり減ったりするわけですが、亡くなる方が圧倒的に少なくなったため、生まれる子どもが減ってきても、総人口が増えてきたといえます。
ただ、人口が増えることと、たくさん生まれていた赤ちゃんも皆長く生きるようになるということで、そうなりますと、だんだんと少子化という現象が起こってきます。そうすると状況が変わってきます。
この点線は生まれたときに合わせた線ですから、これくらいしか傾かないということです。
●少子化が始まると、人口構成のピラミッドが変化する
これが今いいましたように、少子化が始まるとこうした形で人口の図式が変わります。それが先ほど示した実際の人口ピラミッドのような形になってくることになりますし、このとき生まれた人たちは当然ながら、スライドの赤い線より内側に必ずなりますので、生まれたときよりも人口が増えるということはありません。
したがって、次の時代にはこういう形の人口構成ピラミッド(スライドの青い部分)になってくるのです。
こういうメカニズムが働いて、わが国の場合には高齢化が進むと同時に、人口減少が進むと理解できます。かつては若くして、あるいは子どものときに亡くなっていた人たちが長生きできるようになったことは、人類の悲願ですし、大変喜ばしいことですが、こういうメカニズムが働く結果、高齢化が進みます。高齢者の数が多くなる一方で、若い人の数が減ってきます。これが、さまざまな面で社会に影響を与えることになります。
●少子化対策がうまくいっても、すぐに人口は増えない
それならば、生まれてくる子どもをもっと増やしてはどうかという話になります。実際、少子化対策ということが最近、急速にいわれるようになり、さまざまな保育所の整備や、あるいは児童手当といった形での政策が打たれていますが、しかし前回の将来のシミュレーションのグラフでも示しましたように、そうした政策が功を奏して、合計特殊出生率が上がったとしても人口はまだ減り続けます。これがなぜなのかを示したのが次のグラフです。
これが人口ピラミッドで、ゴーストのようになっている部分が2010年で、この色の付いている部分が2060年の図です。ピンクに色が変...