少子高齢化と財政の役割
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
高齢者に偏る社会保障の現状が財政を悪化させている
少子高齢化と財政の役割(3)歳出と歳入の動向
田中秀明(明治大学公共政策大学院専任教授)
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授の田中秀明氏による「少子高齢化と財政の役割」第三回目では、いよいよ予算の中身に触れていく。日本の財政問題は、何が原因なのか。グラフと講義で、その原因が誰にでも分かる形で示される。(全12話中第3話)
時間:9分08秒
収録日:2017年7月28日
追加日:2017年9月9日
≪全文≫

●歳出と歳入のグラフは「ワニの口」になっている


 「少子高齢化と財政の役割」の第三回は、歳出と歳入の動向について考えたいと思います。前回は、財政赤字の原因や予算をつくる仕組みとして、透明性や財務大臣の権限についてお話をしましたが、今回は異なる角度で財政赤字の原因を考えていきます。つまり、予算の中身について、考えたいと思うわけです。

 最初に、ここ最近の一般会計における歳出と歳入、そしてその差である財政赤字の動向について概観します。一番上の折れ線グラフが歳出、次のグラフが歳入になります。まさにこの差が財政赤字になるわけですが、このグラフはよく「ワニの口」と呼ばれています。ワニの口が大きく広がるように、財政赤字も拡大していることが分かります。

 ただし、アベノミクスになって税収が少し増えましたので、ワニの口は少し閉じました。ほんの少しとはいえ、閉じていることは確認できます。


●27年間で変化しているのは社会保障費だけ


 もう少し中身を見たのが、次の図になります。これは、1990年度と2017年度の一般会計における歳入と歳出の姿を簡単に視覚化したものです。

 これは非常に面白い図で、簡単に申し上げると、税収が27年たっても少しも変わっていないということです。これには驚きます。それから建設国債ですが、いわゆる道路や橋などのインフラを造るときには借金をしてもいいと財政法に書いてあります。この建設国債もだいたい同じ額です。歳入面で非常に大きく増えているのは、特例公債だけなのです。

 次に歳出面を見てみましょう。公共事業、教育、地方交付税といった歳出については、若干のプラスはあってもほとんど変わりません。それでは何が増えているのかというと、社会保障費約21兆円、国債費9兆円、合計約30兆円が増えています。

 つまり、1990年度と2017年度の一般会計の姿を見ると、歳入は赤字国債によって30兆円増えており、その増えた中身は社会保障費と国債費になっているということです。国債費は、社会保障と建設国債を賄った結果として増えたといえますから、この27年間の姿を見ると、社会保障費が非常に増えたことが確認できるのです。


●われわれの保険料では足りなくなっている「保険給付費」


 それでは、一般会計の姿を、もう少し歳出面で見てみましょう。

 社会保障関係費が、一般会計の歳出全体のおよそ3分の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
歴史の探り方、活かし方(2)図書館「レファレンス」の活用
図書館の便利な活用法…全国の図書館からの「お取り寄せ」
中村彰彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
デカルトの感情論に学ぶ(2)感情をコントロールするには
恐怖をなくす方法と感情のコントロール…デカルトの考え方
津崎良典
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(5)徳は孤ならず
敬天愛人…一人ひとりを大切にしながら宇宙を相手に生きる
田口佳史
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通