少子高齢化と財政の役割
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
90年代の欧米諸国はどのように財政再建に取り組んだのか
少子高齢化と財政の役割(4)外国の財政再建の成功と失敗
田中秀明(明治大学公共政策大学院専任教授)
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授の田中秀明氏による連続講義「少子高齢化と財政の役割」。第4回目では、1990年代、欧米諸国中心に行われた財政再建策の成功例と失敗例を取り上げる。当時、財政ルールを導入した国はわずか5カ国だったが、その典型例がヨーロッパ諸国で、共通通貨ユーロ導入を目指して「マーストリヒト条約」を締結した。(全12話中第4話)
時間:14分43秒
収録日:2017年8月9日
追加日:2017年9月16日
カテゴリー:
≪全文≫

●財政ルールの導入と1990年代欧州の財政再建


 少子高齢化と財政の役割の、今回は第四回目となります。今回は、特に1990年代の欧米諸国を中心に、諸外国がどのように財政再建に取り組んだのかについてお話をしたいと思います。財政再建の中身を見てみますと、成功例と失敗例がありますので、これらを比較するのが面白い興味深いわけです。

 1990年代、日本を含めて多くの先進国が財政再建を進め、90年代後半にはアメリカ、ドイツ、イギリスなどの国々が財政を黒字に転換してきました。こうした国の財政再建の中身を見てみますと、「財政ルール」といった予算制度の改革を行っているわけです。

 IMFの統計によると、1990年に財政ルールを導入していた国は、先進国・途上国を含めて5カ国しかありませんでしたが、2012年には76カ国に増えています。

 この財政ルールの典型的な例は、ヨーロッパ諸国です。ヨーロッパ諸国が「ユーロ」という共通通貨を導入するためには、各国の財政を一定の範囲に留める必要があるということで、「マーストリヒト条約」という条約を各国は締結しました。

 具体的には、国・地方を併せた一般政府の財政赤字をGDP比3パーセント以下、政府の債務総額をGDP比60パーセント以下にするというルールの導入です。このルールを守らないと、共通通貨ユーロを導入できないということになったのです。参加国は、経済・財政の中期見通しを作成し発表する義務を負うことになりました。もし、このルールを守らない場合は罰則、具体的には3パーセントからどのぐらい乖離したかによりますが、上回った財政赤字に対して罰金を課すという仕組みを導入しています。

 まさにこのルールが成功して、多くのヨーロッパ諸国は財政を黒字に転換したのです。


●2000年代のギリシャ危機とマーストリヒト条約の形骸化


 ところが2000年以降、再び財政赤字が悪化しました。その典型が、ヨーロッパでは「ギリシャ危機」です。90年代に成功したマーストリヒト条約が、なぜ2000年代にはルールとして機能せず、ギリシャ危機を招くことになったのか。これは非常に重要な経験であることをわれわれに示しています。

 90年代には「ユーロに参加する」ということに、非常に政治的なインセンティブがありました。考えてみてください。ドイツやフランス、イタリアといった国々が、この財政ルールを守れずに共通通貨に参...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(4)社会課題の解決に取り組む人財産業
メダカの学校・総合的な学習(探究)の時間・逆参勤交代
小宮山宏
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換
強まるアンチ・グローバリズムの動きをどう見ればいいか
岡本行夫
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子