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日本は「劣化国家」として徐々に沈んでいくのか?

少子高齢化と財政の役割(12)日本財政の今後の展望

田中秀明
明治大学公共政策大学院専任教授
概要・テキスト
明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授・田中秀明氏の連続講義「少子高齢化と財政の役割」。最終回の今回は、「日本財政の今後の展望」である。その指標として、田中氏が用いるのは、プライマリーバランス(PB)と呼ばれる基礎的財政収支。OECD諸国の中で赤字が増えているのは日本だけだという。(全12話中第12話)
≪全文≫

●風前の灯火となっている安倍政権の財政再建目標


 これまで11回にわたり、少子高齢化と財政の役割について議論をしてきました。最後に日本財政の今後の展望についてお話をします。

 まず、今の安倍政権の財政再建の目標についてお話ししたいと思います。安倍政権は、2020年に基礎的収支(プライマリーバランス、PB)を均衡させることを目標にしています。残念ながら、この目標はもはや風前の灯という状況です。

 アベノミクスではご承知のように、名目成長率が3パーセント伸びるといっています。仮にその高い成長率を達成し、あるいは消費増税10パーセントを実施したとしても、2020年のオリンピック年に基礎的収支が均衡することは、ほぼ不可能だと予測されています。


●世代間の公平さと財政の持続可能性を表すPB


 そこで、基礎的財政収支について、少しお話をします。基礎的財政収支は、歳入から国債収入を除いたものと、歳出から国債の利払いおよび国債償還費を除いたものの収支を表します。

 「基礎的収支が赤字である」とは、現在われわれが受けているサービス(便益)を税金では賄えていないということです。過去の借金はさておいても、今受けているサービスを(今の世代が)負担せず、将来世代にツケを回している状況なのです。

 世界の先進国の中で、PBが赤字の国はごくわずかです。イタリアやギリシャのように財政危機になった国も、今や基礎的財政収支は黒字になっています。ですから、基礎的財政収支は、世代間の公平さを測る重要な指標なのです。

 もう一つ、基礎的財政収支は、財政の持続可能性を表す指標です。細かい計算は省きますが、基礎的財政収支が均衡している場合、利子率が成長率より高いと、国債残高のGDP比は将来まで永遠に増え、発散していくということです。逆に利子率が成長率より低い場合は、債務残高が年々減少するということなのです。

 われわれ個人や企業も借金をしていますが、どれだけ借金ができるかは稼ぎとの関係で決まります。国家の財政も同じで、借金をゼロにする必要はありませんが、それが稼ぎであるGDPと比べて徐々に減るかということが大事です。


●OECD随一の債務残高超大国日本に痛みがない理由


 ところが、日本の債務残高GDP比を諸外国と比べてみると、ずっと増えている状況です。ギリシャやポルトガルのように財政破綻に陥った国は、確かに債...
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