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「政治は情、役人は理」…後藤田正晴が示したバランス感覚

日本の財政と金融問題の現状(2)「政と官」のあるべき姿とは

木下康司
元財務事務次官/株式会社日本取引所グループ取締役会議長
概要・テキスト
第二次安倍政権時代、長らく5パーセントだった消費税が8パーセント、そして10パーセントへと上がっていった。その政策の背景には、閣僚と官僚による経済政策をめぐる苦闘と調整があった。その内幕を明らかにしながら、理想的な「政と官」の関係について考える。(全4話中第2話)
時間:14:41
収録日:2025/04/13
追加日:2025/06/17
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≪全文≫

●2014年の増税の背景にあった動き


 それから、次が増税の話になるわけですが、増税の背景でどういう議論が行われているか、内幕をご紹介します。

 先ほど言った2012年8月に税と社会保障の一体改革法案が与党民主党と野党自民党合意の下に成立して、それは消費税を5(パーセント)から10(パーセント)に2段階で上げ、その財源を社会保障に使うというのがその中身でした。採決直前に私、たまたま日比谷のプレスセンタービルのエレベーターで安倍(晋三)元総理と乗り合わせたときに――もちろん前から存じ上げていますが、当時はまだ狭間でしたから――「僕は本当は消費税引き上げには反対なんだけれどね」とか言ってニヤニヤしておられましたけれど、これは、その後、退官まで続く安倍総理との消費税のやりとりの始まりだったのです。

 その直後に私は主計局長になりまして、2012年9月に野党自民党の代表戦で安倍総裁が誕生されました。野田(佳彦)総理は11月に例の党首討論で衆議院解散を明言されて、解散されるわけです。結局そうなってくると、そのときの民主党の支持率は落ちていたので、自民党が安倍総理になるというのは分かっていました。とにかく税と社会保障の一体改革路線を引き継ぐことが新政権にとっても非常に重要なことなのだということを総選挙の前から、当時の安倍総裁を中心に何回も説得に行きました。

 それで具体的には財政運営目標というものがありまして、そのGDP比のプライマリーバランスというものを2015年度までに半減させるという目標を立てていたのです。とにかくそれを野党自民党の公約に入れてもらわないことには、全部、税と社会保障の一体改革の根拠が吹っ飛んでしまうものですから、ご説明に行っていました。11月のたしか後半ぐらいだと思いますけれど、当時の安倍総裁、それから菅(義偉)先生が幹事長代行だったと思いますけれど、一応公約に、その大枠は維持してあげると言われて、大変ホッとしたことを覚えています。

 それで12月に総選挙があって、自民党が勝って、それで安倍政権ができて、年末年始返上で初めての予算編成をやりました。それが無事終わって、2013年4月に日銀総裁が白川(方明)さんから黒田(東彦)さんになるわけですが、それが終わるといよいよ消費税を翌年、4月から予定通り本当に上げるかどうかが、安倍政権にとっての最大のイシューになったわけです。

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