●会計検査院から日本の政治を見る
―― 皆さま、こんにちは。
田中 こんにちは。
―― 本日は田中弥生先生に、会計検査院、そこから見える日本の財政について、いろいろと裏側が見えてくるということで、そのお話を伺いたいと思っております。
田中先生、会計検査院というと、なかなか、イメージがつかない方も多いかと思うのですけれど、実はいろいろ検査していく中で、日本の政治のあり方、ないし財政のあり方の問題点がずいぶん浮き彫りになっているということですよね。
田中 おっしゃる通りです。まず最初におっしゃった、なかなか知られていないというのはおっしゃる通りで、私も大学で授業を持っているのですけれど、3年ぐらい前に「会計検査院を知っている人?」と言うと、誰も手をあげなかったというぐらい、社会的な認知度が低かったのです。ただ、この会計検査院という組織の建て付けというのは、かなり立派なものだと思います。
この会計検査院というのは、実は憲法上の組織でありまして、憲法90条に記されています。国の収入支出の決算は、全て毎年、会計検査院がこれを検査するということが、この憲法に明記されています。
―― 案外、その予算審議のときは報道も多いですけれど、決算というのはなかなか注目されないですよね。
田中 そうなのです。これはよく報道の方とも議論するのですけれども、たぶんわれわれの思い込みもあって、「国民は予算には関心があるけれど、決算には関心がない」という言い方をよくされるのです。ところが2024年、会計検査院長としてテレビに生出演を何度かしたのですけれど、これは反響は大きいです。
―― そうですよね。
田中 というのは、「国費がどう使われたのか」というのは、教育も然りですし、それから医療だとか、こういったものが身近なところで国費として使われているからサービスとして提供されるわけですから、これは、ぜひ国民の皆さんに知っていただきたいですし、関心が高いところだろうと思います。
―― それでこの講義でもあとでお聞きしますけれど、実は「予算は計上されているのに使われていない」とか、いろいろと問題点が浮かび上がってくるわけですよね。
田中 はい。
―― そのあたりもぜひ聞いてまいりたいと思います。
田中 はい。