感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン
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なぜ日本はワクチン開発が遅れてしまったのか
感染症予防・がん治療に使えるmRNAワクチン(5)科学技術立国・日本の現状と課題
内田智士(東京科学大学 難治疾患研究所 教授 /京都府立医科大学 大学院医学研究科 特任教授 )
mRNAワクチンについての一連の講義を踏まえて、「液性免疫・細胞性免疫」「腫瘍関連抗原・ネオ抗原」それぞれの仕組みとその違い、ワクチン開発の状況、そしてなぜ日本のワクチン開発が遅れたのか、その要因と日本の課題など、気になるポイントを質問形式で深堀りしていく。アメリカにあって日本にないもの、それはすなわち研究の多様性と産業界との連携である。日本が科学技術立国として返り咲くための課題はそこにある。(全5話中第5話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:15分08秒
収録日:2021年4月13日
追加日:2021年7月9日
≪全文≫

●「液性免疫」と「細胞性免疫」の仕組みとその違い


―― 先生、ありがとうございました。

内田 ありがとうございます。

―― いくつか質問させていただきたいと思います。一つはワクチンの話にあった「液性免疫」と「細胞性免疫」についてです。これについてもう少し詳しく説明いただきたいと思います。基礎的な質問ですが、そもそも液性免疫と細胞性免疫はどのように違うのか教えていただけますか。

内田 液性免疫は、すなわち抗体を意味します。皆さんがよくご存じの抗体を意味していて、抗体があると何が起こるかというと、例えばコロナウイルスだったら、抗体はウイルスの表面にベタベタくっ付きます。そうすると、ウイルスはどんどん感染できなくなってしまいます。そのように、ウイルスの感染する作用を抑えるのがこの液性免疫です。

 もう一つの細胞性免疫は何かというと、ウイルスに一度感染するとウイルスがどんどん広がっていくことが問題ですが、これを広げないために、ウイルスに感染した細胞をどんどん攻撃していきます。そうすると、ウイルスはそこからさらに他の細胞に移りにくくなります。つまり、ウイルスに感染した細胞をどんどん攻撃することが、細胞性免疫の重要なメカニズムです。

―― これは過剰に攻撃してもまずいですよね。

内田 そうですね。ただ、ウイルスがない限りはウイルスがない細胞に対して攻撃することは基本的にないので、そういった点では大丈夫だと思います。

―― そういう意味での危険性はあまりないという認識でよろしいでしょうか。

内田 そうですね。もう一つ重要な点は、ウイルスに感染した細胞を攻撃するだけではなく、それを記憶しておけることです。いろんな細胞が免疫に関わっていますが、実は細胞は抗体がなくなっても細胞自体は残っていて、次に同じウイルスが入ってくると、その細胞が覚えていた記憶をまた呼び起こして、すぐにそのウイルスに対して攻撃できます。そういったことも細胞の一番重要なところです。抗体は時とともにどんどんなくなっていきますが、細胞はそれより若干長生きして、ウイルスが前にやってきたことをちゃんと覚えているといえます。

―― なるほど。単純化していいのか分かりませんが、液性免疫が一種ブロック的な働きで、細胞性免疫が攻撃性を持つイメージで良いでしょうか。
...

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