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mRNAを利用した膵臓がんの「血管新生阻害療法」とは

ナノテクノロジーでがんに挑む(6)ユニットPICとmRNAによるがん治療

片岡一則
ナノ医療イノベーションセンター センター長/東京大学名誉教授
概要・テキスト
がん治療におけるユニットPICとメッセンジャーRNA(mRNA)の具体的な活用事例を紹介する。ドラッグデリバリーシステム(DDS)の観点から、がん治療に新たな可能性を与える2つの画期的な事例は、ナノマシンがもたらすことになる医療革命に説得力を与えてくれる。(全8話中第6話)
時間:10:30
収録日:2021/05/12
追加日:2022/04/02
キーワード:
≪全文≫

●ポリマーとsiRNAのランデブー


 ここから先は少し専門的になりますが、ユニットPICは非常に面白いのです。これは安定に見えますが、実はフラスコの中では常に相手のポリマーと置き換わっています。つまり化学平衡(平衡状態)にあります。

 この動画を見ていただくと分かりますが、赤が紫に変わる、紫が赤に変わるようにして、常に置き換わっています。このように安定化しています。

 本当にこれが体の中で起きているのですかと思われるかもしれません。

 それを調べるために、また再び蛍光のエネルギー移動を使います。今度はポリマーのほうにドナー、つまり与えるほうの蛍光色素をつけます。siRNAのほうには受け取るほうの蛍光色素をつけています。この二つがドッキングした場合、ドナーを励起するとそのエネルギーがアクセプターに移るので、アクセプターの蛍光が出ます。

 これを実際に動物の体の中で行います。まずはポリマーだけをマウスに全身投与します。そうすると、当然フレット(FRET)など起きず、蛍光のエネルギー移動は起きないので、青が見えるはずです。

 実際に血管の中は青いのです。

 そのあとにsiRNAを打ち、これが本当にポリマーに捕まえられると蛍光のエネルギー移動が起きるので、今度は赤くなるはずです。

 このように赤くなります。

 念のため、標識していないポリマーを半分量入れると、半分だけ置き換わるので、ちょうどこの真ん中の緑になります。

 ですから、この血管の中でポリマーがほぼ選択的にsiRNAとランデブーをしています。ポリマーとsiRNAがランデブーしているのです。

 ここでは宇宙空間の話が出ていますが、実は血管の中は宇宙空間より難しいのです。

 いろいろなタンパク質や細胞がたくさんあり、実態は人混みの中で赤い帽子を被...
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