●オートファジーの大事な役割「栄養素のリサイクル」
それでは、ここからは体で起こっているオートファジーがどのような働きを持っているかということについて説明していきたいと思います。
オートファジーを見ることができるようなマウスを使うことによって、絶食するとオートファジーが非常に活発になるということが分かりましたけれど、これにどのような意味があるかということになります。
哺乳類の場合、お腹の中に赤ちゃんがいるときは、胎盤を介してお母さんから栄養が自動的にやってきますので、栄養学的には守られているわけです。そして、生まれると同時に、この胎盤からの唯一の栄養供給経路が突然遮断されますので、赤ちゃんは、非常に激しい飢餓に出会うこととなります。
このとき、やはり全身の組織でオートファジーが活発に起こっています。ここで、マウスの遺伝子にまた工夫をする。(例えば)オートファジーに必要な遺伝子、ここでは「Atg5」を使っていますけれど、このAtg5というオートファジーに必要な遺伝子を欠損したマウスを作ります。すると、そのようなマウスが生まれてくるのですけれど、1日以内で死んでしまいます。
死んでしまう理由はいくつかあって、複雑ではあるのですけれど、このマウスは、血液とか臓器の中のアミノ酸の濃度が非常に低下しているということが分かっています。つまり、深刻な栄養不良状態になっています。これは、そのことが早く死んでしまう1つの理由だと解釈をしています。つまり、この実験が意味することは、生まれた際の飢餓状態のときに起こるオートファジーが、たしかに動物の生存に重要であるということです。
また、生まれた後に起こるオートファジーが人生で最初のオートファジーかというと、決してそうではなくて、初めてのオートファジーは受精です。卵子が精子と受精した直後に起こります。
上の写真はマウスの未受精卵で、下の写真はマウスの受精卵です。比べていただくと分かるように、受精卵ではオートファゴソームがたくさんできているということが分かります。
これは、卵子が卵巣から飛び出して飢餓になったわけではなくて、...