知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「脳の透明化」…飛躍的進展を遂げた脳の構造への理解
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(3)脳活動の測定技術
毛内拡(お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教)
脳障害や遺伝子に着目することで発展してきた脳研究だが、脳の活動を観察する手法はそれだけではない。1700年代、生物の肉体が電気を発しているという、いわゆる「生体電気現象」の発見をきっかけに、電気的な測定法が開始される。これが後に「電気生理学」と呼ばれる学問に発展していく。そこから、脳に電極を埋め込むことで、生きている動物の電気活動を測る「細胞外記録法」へと展開し、脳細胞のミクロな活動を観察可能にした顕微鏡技術、そして、脳の解剖学的な構造を理解するのに飛躍的な進展をもたらした「脳の透明化」と呼ばれる技術へと進んでいく。それらはどのようなものなのか。それぞれ紹介する。(全8話中第3話)
時間:11分31秒
収録日:2022年10月21日
追加日:2023年7月17日
≪全文≫

●電磁気学の発展によって大きく進展した脳研究


 次に、もう一つの柱である、電気的な測定法について説明します。

 生物が電気を発生するという現象、いわゆる「生体電気現象」というのは、実は発見が古く、1700年代に発見されていました。これは、カエルの足の筋肉が電気を受けるとピクピクと動くということから、実は生体というのは電気を使って信号や情報をやり取りしているのではないかということが分かってきまして、これが後に「電気生理学」と呼ばれる学問に発展していきます。これを見つけたのはイタリアのガルバニという人ですが、この研究に影響を受けた、同じくイタリアのボルタという人が電池を発明するに至ります。ボルタというのが今、電気の単位となっているボルトの元となったわけですが、この電池の発明を皮切りに、「電磁気学」という学問が発展して、われわれが今使っている家電だとかコンピューターとか、それからインターネットに続いていくわけです。

 生体が電気を発生するということが最初にあって、そこから電磁気学が生まれたということが面白いと思いました。

 このように、電磁気学の知見が高まって測定技術が発展すると、さらに新しい生体の電気現象が測定できるようになってきまして、これが非常に高まったのが20世紀です。20世紀は「電気生理学黄金時代」とも呼ばれていまして、筋肉だけではなくて、実は脳を作っている脳細胞、ニューロンが電気活動をしているということも次々と明らかになってきました。

 この技術を皮切りに、脳の電気活動を測る技術が次々と発展してきまして、特に「細胞外記録法」は革命的な進展をもたらしました。これは、脳に電極を埋め込むことで、生きている動物の電気活動を測ることができるという方法です。これを使って、動物が迷路を解いていくときに、どのように脳活動をしているかということも分かってきました。

 【参考動画】
 https://youtu.be/lfNVv0A8QvI

 これはその研究の一部ですが、迷路を解こうとしているラットが今、自分がどこにいるかということに応じて、別の細胞を活性化しているということを表している研究です。この研究から、脳の中には(...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか
きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
長谷川眞理子
“膝の痛みの名医”が語る(1)変形性膝関節症とは
膝の痛み…変形性膝関節症に有効なのは「運動療法」
黒澤尚
認知症とは何か(1)疾患の種類と対応
多くの認知症の原因は「脳のゴミ」の蓄積
遠藤英俊
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気
健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症
鄭雄一
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
キリスト教とは何か~愛と赦しといのち(1)「イエス」とは一体誰なのか
「イエス・キリスト」という名前の本当の意味は?
竹内修一
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子