知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
フグ、サソリ、ヘビ…神経毒とイオンチャネルの危ない関係
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(5)ニューロンが生み出す活動電位
毛内拡(お茶の水女子大学 基幹研究院自然科学系 助教)
脳が情報のネットワークを形成するために不可欠の細胞「ニューロン」は、いったいどのようにして情報を伝達しているのだろうか。鍵を握るのは「活動電位」と呼ばれる電気的活動だ。ニューロンは、活動電位によって細胞間の情報伝達を行っている。しかし、情報伝達の終末部では、その電気的活動は化学信号に変換される。いったいどういうことなのか。その仕組みについて解説し、化学信号への変換に使われる神経伝達物質を紹介する。(全8話中第5話)
時間:12分24秒
収録日:2022年10月21日
追加日:2023年7月31日
≪全文≫

●連続的な活動電位の発生が情報を表現する


 次に、ニューロンの詳細な構造を見ていきたいと思います。

 ニューロンはもちろん細胞なので、他の細胞と同様に細胞体があって、その中に核が含まれていて、ここに遺伝情報があるわけです。ニューロンが特徴的なのは非常に微細な突起をたくさん持っているということです。この突起は「樹状突起」と呼ばれていて、この突起で他の細胞からの情報を集めています。この情報が細胞体部分で統合されて、その情報が「軸索」と呼ばれる電線を伝って、他の細胞に情報を伝えていきます。この軸索の一番どん詰まりのところで、電気信号を化学信号に置き換えて、次の細胞に情報を伝達していくわけです。

 ニューロンが特徴的なのは、電気を発生するということにあります。このニューロンの電気活動を電極で測ってみると、入力が小さいときには電気活動は起こらないのですが、十分大きな刺激が入力されると、このように特徴的なトゲのような電気活動を示すことが分かっていて、これを「活動電位」といいます。

 この活動電位というのは、他の呼び方では「神経インパルス」といったり、「膜興奮」といったり、また研究者の間では「発火する」とか、もしくは靴の裏に付いているトゲのような形をしているので「スパイク」ということもあります。このニューロンの活動電位は2、3ミリ秒で上がって下がるという非常に特徴的な形をしていますが、これは1発で終わるわけではなくて、いくつか連続して発生することで情報を表現するといわれています。

 「神経は電気を発生する」と言いましたが、このように発生する電気はコンセントからくる電気とは少し性質が異なります。なので、正確には「電気的活動」といいます。実際、神経線維に電気を流してみても、金属ほどは導電効率が良くないのです。ところが、金属の導電と違うのは、全く減衰することがないということです。金属に電気を流したら途中で減衰してしまうのですが、脳神経の場合は、脳で発生した電気信号は必ず最後まで減衰することなく届きます。したがって、電線とは異なる仕組みで信号を伝えていると考えることができます。


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
睡眠:体、脳、こころの接点(1)睡眠とは?
なぜ睡眠は生きるために必要?脳にある覚醒中枢と睡眠中枢
尾崎紀夫
老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気
健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症
鄭雄一
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法
どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?
西野精治
ウイルスの話~その本質と特性(1)生物なのか、そうではないのか
きわめて特異的な「ウイルスと宿主の関係」
長谷川眞理子
オートファジー入門~細胞内のリサイクル~(1)細胞と細胞内の入れ替え
ノーベル賞受賞「オートファジー」とは?その仕組みに迫る
水島昇
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓