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冷房をつけると気持ち悪い…断熱性能の低さが影響する問題

断熱から考える一年中快適で健康な住環境(4)冷房効果を左右する断熱性能

前真之
東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授/博士(工学)
概要・テキスト
年々過酷さを増す夏の暑さ。室内での熱中症患者も多くなっているが、冷房の使用をためらってしまう人も少なくない。冷房の使用を躊躇する理由として、節電やエアコンの不快さといった動機が挙げられるが、電力事情や断熱性能の観点から、それらの理由の妥当性を考えてみよう。(全6話中第4話)
時間:09:35
収録日:2024/06/20
追加日:2024/09/01
キーワード:
≪全文≫

●冷房が電力を消費する時代は終わった


 夏は今どんどん暑くなっています。特に梅雨明けの7月以降、熱中症になる方が非常に多いのです。しかも多くが室内で、高齢の方が熱中症になっているということです。なるだけ冷房を我慢することなく、健康のために、しっかり使っていただきたいというお話をしてまいりました。

 しかし、こういったお話をすると、冷房は電気がもったいない気がする。昔は「節電、節電」と言っていた。あと、電気のことはともかくとして、冷房はつけるとすごく気持ち悪い、不快だ、だからできれば使いたくない。といった、節電の問題と不快の問題で、冷房をあまり使いたくないという方が多くいらっしゃるわけなのです。この問題について考えておきたいと思います。

 まず、先ほど申し上げた通り、暑い年は9万人以上の方が熱中症で搬送されます。しかもその多くが室内で高齢の方がなっていますから、冷房は非常に大事になってきています。もうこれだけ温暖化が進んでいる中では、冷房は夏、健康に暮らすために不可欠だということです。では電気はどうなのかということです。「昔は節電、節電と言っていたよね」ということになります。

 たしかに昔は冷房、特にオフィスが夏の冷房をいっぱい使っていたのです。昔は夏の昼間に冷房で電気をいっぱい使われると、電力会社は、その夏の昼間のためだけに、年に10時間、20時間しか動かさないような発電所を造らなければいけなくなり、それはすごくコストが無駄だということで、電力会社は夏に節電してください、冷房を止めてください、冷房の設定温度を上げてください、というキャンペーンをやっていたわけなのです。

 けれど、今は時代が変わったのです。今は太陽光発電が非常に増えまして、電気の1割以上を太陽光発電が賄えるようになってきております。実はこの太陽光発電と冷房はものすごく相性がいいのです。なぜならば、冷房が必要なのは夏の昼間です。しかも天気がいい日です。太陽光が発電するのも昼間、天気がいいときであるわけです。ですので、冷房の電気を賄うのに太陽光はベストマッチだということになります。

 こちらは去年(2023年)の7月26日、東京が非常に高温だった7月26日を含んだ1週間の電力の供給状況を表しています。いろんな電源が重...
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