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遮熱では十分ではない…夏でも断熱が必要な理由

断熱から考える一年中快適で健康な住環境(3)なぜ夏も冬も断熱が必要なのか

前真之
東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 准教授/博士(工学)
概要・テキスト
「断熱」というと、冬の寒さ対策としてイメージされがちだが、実は夏場にも欠かせない重要なものだと言う前氏。それは、断熱すると、冬の暖房時は暖かく、夏の冷房時は涼しくなるからだ。今回は断熱がいかに夏冬の室温管理に不可欠な装備であるか、断熱が作用するメカニズムについて、遮熱との違いにも触れながら詳しく解説する。(全6話中第3話)
時間:15:43
収録日:2024/06/20
追加日:2024/08/25
キーワード:
≪全文≫

●断熱の力――断熱材で熱伝導を断つことで表と裏に温度差を作り出す


 それでは、なぜ断熱が必要なのかということについて考えてみたいと思います。

 なぜ断熱すると冬の暖房時は暖かく、夏の冷房時は涼しくなるのかということです。これは簡単に見えますけれど、実は少し難しい話があります。建築を仕事にしている人でも十分に理解できていない場合があるかもしれないので、ここでは、詳しく断熱が作用するメカニズムについてお話ししたいと思います。

 断熱というのは、ある意味では単純な話でして、読んで字の如くです。熱抵抗の大きい、熱を断つ材を使った断熱です。この断熱材というのは、熱伝導という熱の伝わり方をカットすることができます。この断熱材で熱伝導を断つことで、表と裏に温度差を作り出すのが断熱の力です。

 それを可視化するために、こちらが断熱材の一種であるグラスウールです。これをホットプレートの上に置いてみたものになっています。ホットプレートのほうは非常に高温です。赤くなって、150度以上になっているわけです。でも一方で、反対側のほうは30度くらいにとどまっています。その断面のところで温度差がついていることがお分かりいただけるかと思うのです。

 このグラスウールのような断熱材は空気をいっぱい含んでいるわけです。空気というのは非常に熱を伝えにくい物質になっています。ですので、その空気をいっぱい含んだ断熱材が、熱の伝わっていく伝導を食い止めていくために、表と裏で非常に大きな、この場合100度以上の温度差をつくり出せているということになるわけです。この断熱の力が、冬と夏にどのように作用するかを見ていきたいと思います。


●断熱のなさが暖房の熱をにがす仕組み


 まず、冬の暖房時を考えてみたいと思います。

 こちらは、下のほうが室内側です。暖房していて、暖かい側になります。真ん中にあるのが建物の外皮、屋根、天井や壁ということになります。上のほうは室外側です。冬は室外側が寒いわけです。こうした中で、室内側、暖房をしている暖かい側から寒い室外側に熱が抜けていくわけです。この全部の流れをまとめて、「熱貫流」というわけです。実は、それぞれの場所でけっこう複雑な熱の伝わり方が起きているということになります。それを1...
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