2050年のための「前向きの愛国心」
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
正しい戦略を本気でやろう…「資源自給国家」への道筋
2050年のための「前向きの愛国心」(2)資源自給国家は実現できる
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
正しい戦略を本気でやれば、人も情報も集まってくる。では、どのような戦略に基づいて進んでいくべきだろうか。まず、つくったのが「2050年の社会と森林産業はどうあるべきか」のビジョンである。林業の抜本的改革のため、バイオマス化学や木造都市のような需要を先行させ、供給をつくる試みは図に当たり、悲願の「資源自給国家」への道筋が見えてきた。(全3話中第2話)
時間:11分16秒
収録日:2024年6月5日
追加日:2024年9月14日
≪全文≫

●森林資源で「4.7兆円」の直接的な経済効果


 われわれが行ってきた最初の作業は、「2050年の社会はどうあるべきか。森林産業はどうあるべきか」というビジョンづくりでした。これを「第一フェーズ」といっていますが、ここで分かったのは、日本にはこれまでみんなが思っていた量の2倍近くの森林資源があるということでした。

 また、今は4割ぐらいが自給で、6割ぐらいを輸入していますが、全部自給にできる(見込みが出てきました)。それから、伐採量は少し増えてきているのですが、切った後に40パーセントくらいしか植えていない。このまま行くと丸裸になりますが、全部植えてやっていくことも可能であることが分かりました。それで、「ここに向かおう」と。

 具体的には、(図の)右下の森林・林業を立ち上げる。ただ、それは今までにもいわれたことで、「林業をなんとか立ち上げよう」というのは、いろいろなところで結構試みられてきました。だから、また同じことをすればどうせ失敗するわけです。そこで、われわれはバイオマス化学とか木造都市とか、そういう需要で供給のほうを引っ張っていくというプロセスも含みながら全体(の取り組み)をやっていこうと。

 それができると、現在の4倍、細かくいえば3倍ほど(の木)を切って――根などもちゃんと利用するなど、いろいろあるのですが――ざっといえば、4倍の森林資源を毎年切るなどすれば、日本で発生している二酸化炭素のほぼ1割程度を固定できる、(つまり)削減できるのです。

 それから、4.7兆円の直接的な経済効果がある。これは先ほど、輸入が自給に変われば40兆円から50兆円の内需が生まれると申し上げたことの一部です。


●林業の推進戦略は「現実を動かす」ところから


 そして、ビジョン実現に向けた推進戦略。これを「第二フェーズ」として今一生懸命やっていて、間もなくまとまるはずです。ここでは一つ、皆さんがよくいう「産官学民の総力をあげる」、口でいうのは簡単ですが大変なのです。特に「官」の場合は縦割りになっていますから。

 しかし、今いったバイオマス化学や森林のような分野では、自動的に入らなくてはいけないところが出てきます。もちろん農水省とは最初から仲良くやっています。また、「石油化...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
浦環
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔

人気の講義ランキングTOP10
熟睡できる環境・習慣とは(3)睡眠にいい環境とお風呂の入り方
布団に入る何分前がいい?入眠しやすいお風呂の入り方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
中国共産党と人権問題(5)そもそも人権思想と憲法とは?
中華人民共和国憲法は人権型ではない
橋爪大三郎