五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査
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海底に突き刺さる旧日本海軍の潜水艦「伊58」を特定!
五島列島沖合の海没処分潜水艦群調査(1)目的と潜水艦史
科学と技術
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
2015年に五島の沖合で24艦の潜水艦が発見されたとのニュースがあったのを、ご記憶の方もいるだろうか。浦環氏は、この潜水艦の全ての艦の特定を行った。なぜこのような調査を行うのか、潜水艦を特定することにどのような意味があるのだろうか。浦氏の解説を聞こう。(全8話中第1話)
時間:8分47秒
収録日:2018年3月23日
追加日:2019年1月26日
≪全文≫

●五島列島沖合の海没処分潜水艦群の調査


 今回は、ここ1年間、私たちが非常に力を入れてきた、五島列島沖合の海没処分潜水艦群の調査と、その海中技術をご紹介したいと思います。その内容は、テレビや新聞で取り上げられてきたのでご存じかと思います。

 この写真は、サイドスキャンソナーのデータで、2017年5月に、われわれが撮影してきたものです。これは後で分かりますが、伊58のブリッジ(艦橋)部分と、それから一番端のところに舵がありますが、船尾が発見されました。新聞にも大きく取り上げられました。その時はどの潜水艦か分からなかったのですが、8月末に遠隔操縦機(ROV)で詳細に調査し、この艦が伊58であることが分かったのです。

 これは私が代表理事をしている、一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会のプロジェクトとして、「伊58呂50特定プロジェクト」というプロジェクト名で、1年前に始めたものです。例えば、伊58の潜水艦は、具体的にはこのようになっていました。潜水艦の全長は110メートルです。そのうち60メートルぐらいのところから、上に立ち上がっています。この下がどうなっているかは分かりません。

それから、プロジェクト名になっている、もう一方の呂50という潜水艦ですが、これは潜水艦のサイドスキャンイメージです。全長が80メートルぐらいの船で、このような形をしていますが、ここにブリッジの部分が映っています。それから、ここに見えているのは高角砲です。このように、全体の形がわりと残っているので、これが呂50であることはすぐに分かりました。


●海に落ちたものは探し出す・引き上げる・水に流さない


 私どもが一体このプロジェクトで何を言いたいかというと、海中技術者として、また海に関わる私の根性としては、まず「海に落ちたものを必ず探し出す」ということです。それから、「海に落ちたものを必ず引き上げる」。それから、「決して水に流さない」。日本人は、水に流そう、臭いものにはふたを、ということが得意で、海の中に流れていったものは、もう水に流して忘れてしまおうとするのですが、このような態度はよくないと考えます。

 まず、海に落ちたものを必...

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