●海中調査には非常にお金がかかる
さて、それでは続いて、ROV調査の詳細についてご紹介しましょう。これによって、皆さま方は海中調査がどんなものであるかをご理解いただけるかと思います。海中調査は非常にお金がかかります。だから、放ったらかしになっているのです。近ごろ、アメリカのポール・アレンがさまざまな新しい装置を使って、道具立てをして、第2次世界大戦の沈没船を発見しています。つい最近も新たな発見をしました。彼らはなぜそれができるのか。大金持ちだからです。大金持ちだから調査ができるのですが、では貧乏人はどうか。調査ができません。私も貧乏人ですから、調査をしたいといっても、お金がないからできないのです。
第2次世界大戦の沈没船の調査は、国では行いません。なぜかというと、いろいろな理由がありますが、そうなると民間で行うことになります。民間が行うと一体どのくらいお金がかかるでしょうか。これはROVを展開するための支援船で、早潮丸という日本サルヴェージの作業船ですが、ここにROVを乗せて出掛けていくのです。
ROVはこれで、このぐらいのクラスになると、ワーククラスといって、マニピュレーターも付いて、いろいろ重作業ができるROVです。これをくっつけて作業をすると、大体1日500万円です。われわれは4日間で調査をしようとしていたのですが、4日間の調査と往復に1日ずつかかりますから、計6日です。そうすると、3,000万円用意しないと調査ができません。大体そのくらいかかるということは、最初から分かっています。
これはとても大変です。3,000万円も持っているわけがないですから。「自分で好きでやるんだから、田畑売ってやれ」というのも大変です。そうするとお金を集めなくてはいけません。お金は一応、3系統の寄付を集めることにしました。1つは日本財団の「海と日本プロジェクト」に採用してもらい、その調査費用として、おおよそ1,500万円出してもらいました。
それから、クラウドファンディングでお金を集めました。「これをやるから、お金頂戴ね」ということで、おおよそ500万円を集めました。それから、私が「お願いします!」「寄付!寄付!」と言って、あちこちに出掛けていって、クラウドファンディングとは別途に寄付を頂いています。それで400万円ぐらい集めました。足すと2,400万円ぐらいで、3,000万円には遠いのですが、何とかなるだろうということで、それだけの資金の下にROV調査を行ったのです。
●超高速インターネット衛星きずなでニコニコ生放送を実施
これがROVで、ここがROVのオペレーションルームです。ここに海と日本プロジェクトの旗が貼ってあります。
調査にあたっては、ただ行うだけではつまらないので、実は、超高速インターネット衛星きずなという試験衛星で船との間を通信して、われわれの行っていることやROVの映像を直接、皆さんにお見せしようとしました。
いくつか問題があるのですが、それは通信が使えるかどうかです。実は、NICT(情報通信研究機構)さんがSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の研究プロジェクトの一環として、小型のアンテナを作りました。それを借りてきて、リアルタイムの衛星中継に使えるかというテストも兼ねて、使わせてもらうことにしました。通信能力はおおよそ10メガbpsで、このおかげでリアルタイムにデータを陸上に届けることができました。
陸と違って、海の上は、簡単に映像をリアルタイムで皆さん方に届けることができません。陸上だとインターネットを通じてでも、いろいろなことでリアルタイムの中継ができます。しかし、海の上で中継しようと思うと、スマホも届かないところですから、もう衛星しかないのです。これがなかなか高くて、普通の衛星を1日中使いっ放しにすると100万円かかります。貧乏人はそれをやるわけにいきませんから、違う方法を考えました。それでいろいろな協力を頼んで、われわれのやっている作業の意義を理解してもらいました。
しかし、それはただ通信しているだけですから、ドワンゴさんのニコニコ生放送として、連続して放送してもらいました。これは非常に成功したと思います。93時間連続で調査をしたのですが、その間ずっとこれを放送していました。その後、いろいろな人に会うと、かなり見てくださっていて、「ずっと見ていました!」とか「ご飯の間中も見ていました!」などと言われました。音声は一応伝えていたのですが、なかなかこの画面しか映ってこないので、一体何が映っているのか分からないものを皆さんずっと見ていただいていたようで、申し訳ないと思います。もう少し解説をきちんとすれ...