今井むつみ先生が2024年秋に発刊された岩波新書『学力喪失――認知科学による回復への道筋』は、とても話題になった一冊です。今回、テンミニッツ・アカデミーでは、本書の内容について著者の今井先生にわかりやすくお話しいただきました。子どもの学力の危機ばかりではなく、「物事を理解するとはどういうことか」に深く迫り、さらにAI時代の問題点についてもご言及いただいた講義となりました。
今回の編集部ラジオでは、この講義について紹介させていただきました。
まず今井先生が書かれた『学力喪失』ですが、この本では最初から5章まで、「実際どれだけ今のお子さんが学力で苦しんでいるか」の実例が展開されます。「なるほど、こういうところで引っかかるのか」と、この部分も興味深い内容なのですが、とりわけ興味深さを増してくるのが、実は第6章以降です。
第6章の「まとめ」から第7章、第8章と読んでいくにつれ、まるで「小さいお子さんが言葉を覚えていって、その抽象化をしていく過程」について、深く理解できるのです。まさに「わかる喜び」を実感できる1冊です。
そもそも、「言葉」は暗記することで身につけるものではありません。「抽象度の高い言葉」は、私たちが思考していく上で欠かせないものですが、それは赤ちゃんのときからすぐに理解できるものでもありません。では、子どもたちはどうやって抽象的な概念を身につけていくのか。たとえば、今井先生は「2分の1と3分の1、どちらが大きいですか?」という問いに約24%の子どもが誤答する例をご紹介くださいますが、そのようなことが、なぜ起きるのか。
その「からくり」について、まず今回の編集部ラジオでポイントを紹介させていただきました。また併せて、生成AIが「しれっと間違える(=ハルシネーション)」事例などを挙げながら、AIが「本当に理解をしているのかどうか」について今井先生に迫っていただいた部分も紹介しております。
人間が「理解する」とはどういうことかが、よく見えてくるこの講義の見どころを、今回も編集部ラジオでお話ししました。ぜひ講義視聴のご参考にしていただければ幸いです。
この講義シリーズは第2話まで
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