近年、アフリカで起こったクーデターは、イスラム過激派の台頭だけではその要因を説明できない。ではクーデターはなぜ起こるのか。また、台湾よりも中国のほうがクーデターが起こる可能性はないのか。クーデターは本当に「ラストリゾート」なのか。質疑応答を通して、クーデターについて多角的に考える。(全6話中第6話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
≪全文≫
●人々の不満の連鎖がクーデターを呼ぶ
【質問】
アフリカのサヘル地域、特にマリ、ブルキナファソ、ニジェールなどで近年、クーデターがなぜ多発しているのか。サヘル地域ではイスラム過激派が台頭、軍がその矢面に立つことで軍の不満が現政権に対する不満につながり、クーデターに至る。そういった背景は分かるが、ガボン、ギニアなどイスラム過激派の脅威が少ないと思われるところでもクーデターが発生しているのは、1つの背景として長期政権があるのではないか。また、2025年はコートジボワールやカメルーンなどで選挙があり、カメルーンは長期政権。こういった地域は比較的イスラム過激派の脅威が少ないと思われるが、クーデターのリスクはあるのか。
上杉 ありがとうございます。イスラム過激派がマリとかブルキナファソとかにいて、軍の不満を高めたことで決起につながりました。けれど、それがない国々はどうなのかという点です。もちろん、イスラム過激派がいたからというだけで決起は起きていなかったといえます。
それで、今回の事例もそうなのですけれど、人々の不満が連鎖していっていると考えることができるかなと思います。自分たちの周辺の国で同じようなことが起きていて、それで連鎖しているというのが1つ現象としてはあると思います。長期の政権がうまくガバナンスをして、経済的な富の配分に成功していれば、人々の不満は起きていなくて、それが決起につながることはない。けれど、いってしまえば、すごく簡単なことではあるけれど、国家建設とか経済発展の基本的なものがうまくできていないと人々の不満が高まって、何かの機会でその不満が爆発して、それに軍が便乗するというような形で、他の国々でもそういったクーデターが発生しかねないと思います。
1ついえるのは、イスラム過激主義(の人たち)がいたところでは、結局、経済的な発展をめざそうとしても、(あるいは)政治的な安定をめざそうとしても、まずそれに対する脅威のイスラム過激派を掃討しない限り、国の発展は望めないので、決起後の安定というものがなかなか作れないのです。イスラム過激派がいない場所であれば、経済政策をうまくすれば、人々の不満を解消していけるかもしれない。けれど、課題はやはり部族間の対立とか異なる利益集団の調整を政府がしっかりできるかどうかというところにかかっているかと思います。それがで...