●コロナ禍でバズワードになった「心理的安全性」
チーム力開発研究所の青島です。われわれの組織はチームの研究やグループダイナミクスの研究を行っている組織です。本日は、タイトルに掲げた通り「チームパフォーマンスを高める心理的安全性」について、皆さまにお伝えしたいと思います。よろしくお願いします。
今日の内容については、2021年12月に書かせていただいた『リーダーのための心理的安全性ガイドブック』(労務行政)の内容から抜粋して、皆さまにお伝えしていきたいと思います。
テーマとしては、スライドに書いてあるアジェンダの通りです。私が「心理的安全性」をテーマにしたのは2019年、「労政時報」の記事が最初でした。その時には、心理的安全性がこれほどのバズワードになるとは思っていませんでした。この2年でこの言葉がかなり世の中に知れ渡ってきたのだな、という実感があります。
やはりここ2年間のコロナ禍等を振り返っていくと、不安感が非常に強くなり、世の中の不透明性が高まりました。そのような中で、皆さまの関心どころがこちらに向かったのかと思っています。
一方で、心理的安全性という言葉の耳ざわりがとてもいいせいか、この言葉について皆さまの中では誤解も生まれているところがあるかとも思います。今日は、この点も含めて皆さまにお伝えできたらと考えています。
●チームの中で心理的安全性が注目される背景と「VUCAの時代」
では改めて、チームワークの中で心理的安全性が注目される背景についてです。われわれが行っているチーム研究の中でも、このテーマは非常に注目されるようになりました。そこで、チームワークの中で心理的安全性が注目される背景について説明したいと思います。
一つ目は、COVID-19によるコロナ禍になったところが非常に大きいかと思います。この2年間で、働き方が急速に変わりました。オフィスワークからテレワークに移行し、2年前の対面でいろいろ話し合いができた状況から、現在ではチームワークづくりに苦労されているチームが増えていることを感じます。
2020年に行われたパーソル(総合)研究所の調査では「テレワークになったことで、対人不安が増えている」と発表されました。調査結果を拝見したところ、上司は部下に対して「サボってしまっているのではないか」と思い、部下は「上司から見るとサボっていると思われているのではないか」と不安を覚えるという回答が出ていました。このあたりの対人不安は、非常に仕事に影響を与えます。そうした背景から心理的安全性への注目が出始めているのかと思います。
二つ目は、やはりCOVID-19に影響されていますが、「VUCAの時代」になったといわれるところです。これまでのビジネスには予定調和性があったというところから、先の読みにくい状況に変化し、現場の知恵や情報がより経営の数字に直結しやすいという時代になってきたかなと考えられます。
「VUCA」という言葉は、「変動性(Volatility)」、「不確実性(Uncertainty)」、「複雑性(Complexity)」、「不透明性(Ambiguity)」の頭文字を取った言葉です。
これは皆さま重々ご承知かと思いますが、30年ぐらい前にさかのぼると、物を出せば売れた時代がありました。リーダーがある程度強権的に「こう決めよう」「こうしよう」と言うと、そこに正解があることも多く、部下のほうでもそれについて行くことによってビジネスが成功してきた時代だったといえます。
一方、今の時代は経営者の方も先行きが読めない時代になってきていますので、トップの方々、あるいは一部の優秀な方々が決めて、それを現場が実行するというやり方では、もうビジネスが立ち行かなくなっています。そのような背景から、多様性、すなわちいろいろな人の知恵を結集しながらビジネスを成功させていくという目標にリーチしていくことが非常に重要になってきました。
だからこそ、われわれはいろいろな方に意見を言ってもらう必要があり、そうした観点から心理的安全性というテーマが注目されているのです。
われわれの世界に仮に予言者がいたとして、もしも「こうすれば正解だ」ということが全て分かっていれば、心理的安全性の必要はありません。そういう時代ではないことを踏まえると、「VUCAの時代」だから心理的安全性が注目されていることがご理解いただけることでしょう。
少し戻りますが、(心理的安全性が注目される背景の)3点目は、働く人の変化にあります。多様性という言葉もバズワードになっているように、チームの中を見ても多様な人材が存在します。性別、...