●心理的安全性を阻害する「5つの不安」
今回は、心理的安全性を阻害する対人不安からお話ししていきます。組織の中で、なぜ心理的安全性が作られないかについて、エドモンドソン氏は「無知」「無能」「ネガティブ」「邪魔をする人」という4つの不安を挙げています。
対人不安は、社会心理学でいう「評価懸念」を具現化したものだと考えられます。人間である以上、われわれは多かれ少なかれ「人からどう思われるか」ということを自然と感じてしまうものです。この評価懸念をいかに払拭できるのかというところが、心理的安全性における一つの大事なポイントであろうと思います。
では、4つの対人不安がどんなところにあるのか、ご説明します。1つ目は「無知」です。「こんなことも知らないのか」と思われることへの不安です。この不安が高まると、チームのメンバーに「なかなか質問ができない」「相談ができない」もしくは「分からないことを聞かない」といった行動が現れてしまうといわれています。
2つ目は「無能」です。知らないのではなく、「こんなこともできないのか」「能力がない」と思われることへの不安です。この不安が高まってくると、できないことを「できない」と言えなかったり、ミスを報告せず隠してしまったりします。今の日本社会でもよく起きていますが、不正をしたり嘘をついたりしてしまうところにつながるのが見て取れるかと思います。
3つ目は「ネガティブ」で、そのように思われたくない不安です。今後「VUCAの時代」となっていくにつれて、過去の活動は是ではなく、批判的な目で見ることが必要だといわれています。そうはいってもやはり「他人のミスやエラーを指摘する」「過去の成功体験を持つ上司の正論を否定していく」ことはネガティブだと捉えられがちなので、そう思われたくないリスクが働くといわれています。
4つ目は「邪魔をする人」だと思われたくない不安です。この後でも申し上げますが、日本社会には「空気を読まない人だ」と思われたくない不安がかなりあります。自分が場の空気を壊してまで発言したり、議論を長引かせたりしたくないと思ってしまう、そんな不安があると考えられています。このような不安があると、自分のアイデアや思ったことを披露できない、決まったことに異を唱えられない、もしくは自分でフィードバ...