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心理的安全性を阻害する「5つの対人不安」とは

チームパフォーマンスを高める心理的安全性(3)心理的安全性と対人不安の関係

青島未佳
一般社団法人チーム力開発研究所 理事
情報・テキスト
「率直な意見を」と促されても気を許せないのが日本の企業風土。「空気が読めない」「立場をわきまえろ」と言われてしまうことへの不安や、自分は無知であるという意識から発言を控えることもある。だが、そんな対人不安こそ、重大な事故や事件を招いてしまいかねない。今回は、心理的安全性を阻害する「5つの不安」とそれによって事故につながった実例を取り上げながら、心理的安全性と対人不安の関係について考えていく。(全7話中第3話)
時間:11:48
収録日:2022/04/26
追加日:2022/08/06
キーワード:
≪全文≫

●心理的安全性を阻害する「5つの不安」


 今回は、心理的安全性を阻害する対人不安からお話ししていきます。組織の中で、なぜ心理的安全性が作られないかについて、エドモンドソン氏は「無知」「無能」「ネガティブ」「邪魔をする人」という4つの不安を挙げています。

 対人不安は、社会心理学でいう「評価懸念」を具現化したものだと考えられます。人間である以上、われわれは多かれ少なかれ「人からどう思われるか」ということを自然と感じてしまうものです。この評価懸念をいかに払拭できるのかというところが、心理的安全性における一つの大事なポイントであろうと思います。

 では、4つの対人不安がどんなところにあるのか、ご説明します。1つ目は「無知」です。「こんなことも知らないのか」と思われることへの不安です。この不安が高まると、チームのメンバーに「なかなか質問ができない」「相談ができない」もしくは「分からないことを聞かない」といった行動が現れてしまうといわれています。

 2つ目は「無能」です。知らないのではなく、「こんなこともできないのか」「能力がない」と思われることへの不安です。この不安が高まってくると、できないことを「できない」と言えなかったり、ミスを報告せず隠してしまったりします。今の日本社会でもよく起きていますが、不正をしたり嘘をついたりしてしまうところにつながるのが見て取れるかと思います。

 3つ目は「ネガティブ」で、そのように思われたくない不安です。今後「VUCAの時代」となっていくにつれて、過去の活動は是ではなく、批判的な目で見ることが必要だといわれています。そうはいってもやはり「他人のミスやエラーを指摘する」「過去の成功体験を持つ上司の正論を否定していく」ことはネガティブだと捉えられがちなので、そう思われたくないリスクが働くといわれています。

 4つ目は「邪魔をする人」だと思われたくない不安です。この後でも申し上げますが、日本社会には「空気を読まない人だ」と思われたくない不安がかなりあります。自分が場の空気を壊してまで発言したり、議論を長引かせたりしたくないと思ってしまう、そんな不安があると考えられています。このような不安があると、自分のアイデアや思ったことを披露できない、決まったことに異を唱えられない、もしくは自分でフィードバックを取りに行けなくなる、そのような行動抑制につながってしまうと考えられています。

 5つ目は、私が個人的に付け加えました。日本の場合、「自己顕示欲が強い」「でしゃばりだと思われる」不安が存在するだろうと思うからです。アメリカをはじめ欧米の場合、自分の意見を主張することは比較的ためらいなく行うことができます。しかし、われわれは「集団の中に所属している個」としての意識が強いため、さまざまな不安が起こりがちです。

 例えば自分の意見や主張をすることで、「でしゃばり」「媚を売る人」と思われるリスクを感じ、「出る杭になりたくない」という制御が働きます。これらは心理的な不安があるためです。こうした不安が高まってしまうと、「人に聞かれるまで答えない」「自分の考えと違う意見に同調してしまう」などの対人不安が発現すると考えられます。


●対人不安が引き起こした事例1:病院での手術患者取り違え事故


 では、こうした対人不安が、これまでにどのような大事故や不正、不祥事につながっているかについて、有名な代表例として2点ご紹介したいと思います。

 1点目は、Y市大(付属)病院の患者取り違え事故です。皆さまの記憶にもあるかもしれませんが、肺(疾患)の患者と心臓(疾患)の患者を間違えて手術してしまったという事故です。

 原因はいくつかあるといわれています。1つ目は、病室から手術室に運ばれた時に看護師が取り違えてしまったことです。この看護師は、どちらの方が肺の手術でどちらの方が心臓の手術なのか実は分からなかったらしいのです。しかし、手術室で引き渡しをする際、近くに自分の後輩の看護師がいたのですが、その後輩に対してどちらが肺の患者でどちらが心臓の患者か分からないと言うのは恥ずかしいと思ったということで、手術室側からそれぞれ「Aさんですか」「Bさんですか」と問われた時、どちらにも「イエス」と答えてしまったようです。つまり、「分からない」と言えなかったのです。ということで起きてしまった事故だろうと思います。

 2つ目として、手術室に入った後でも、(麻酔医の方は)「少しおかしい」と感じながらも、執刀する偉い医師に対して「違うのでは?」と物を申すことができなかったということです。

 このように、いくつかのコミュニケーションにエラーが起こってしまい、このよう...
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