●全体像と役割の提示――「妬み」を生みにくいリーダーの采配
―― (前回のお話にあった「妬み」によるネガティブな雰囲気がチーム内に出てきた場合に、)組織としてはどう取り組めばいいのかというのが、山浦先生のご専門である組織心理学の大きなテーマになると思います。
山浦 そうですね。
―― 前回のお話で、「いい嫉妬・悪い嫉妬がある」というようにもお聞きしました。組織を運営していく中で、どのように「妬み」という要素に向き合い、悪い嫉妬であれば、それを(どう)良くしていくようにするのか。これについては、どういう工夫をするとよろしいのでしょうか。
山浦 そこがまさに今の研究テーマです。前回申し上げましたように、「あの人がひいきされている」ということを感じると、「私にはつれないあの上司は、あるいは仲間は一体なんなの」というようなことで、妬みが生まれてしまいます。
ですから、リーダーを中心にした人付き合い、社員やメンバーたちとのお付き合いの中で、どれだけ公平さ・公正さを担保するかというのが、非常に重要な問題になってくると思います。
できる方にどうしてもたくさん仕事を頼みたくなるということも、リーダーであれば当然の采配だと思われます。そこでぜひ、「こういう理由で、この仕事はこの人に任せる」「この分量でお願いしようと思う」という言葉を、皆さんが納得される形で出していただきたい。そうすると、だいぶ緩和されると思います。
―― 実際に言うほうの立場からすると、そのように言ってしまうと、かえってえこひいきのようになってしまうのではなかろうか、といった心が働くようにも思います。それは、チームの人にはどのように伝えればいいのですか。
山浦 なかなか難しいですね。でも、普段の会話があれば、そういう一言は言えると思うのですが。難しいでしょうかね。
―― これは、意識し過ぎなのでしょうか。今回は大事な仕事だから、「これはあいつしかできないだろう」というようなことを言ってしまうと、いかにもえこひいきをしているようになってしまうかな、と思ったりします。
山浦 そうですね。それはなかなかのえこひいきですね。
―― これは当然、言い方も難しいわけですよね。
山浦 そうですね。例えば企画の仕事だとして、「こういう部分の構想を練るのが上手だから、あなたがやってみて」「次は、こういう部分の仕事が来るはずだから、そのときの準備をしておいて」というような形で、各自の強みをちゃんと生かした上で、また予告も含めて(伝えて)おけば、準備もしやすくスムーズに入っていける。そのような会話ができるとよろしいのではないかと思います。
―― なるほど。今のお話を伺うと、まず全体像を見せてあげて、その中のパーツとして、AパーツからCパーツまであったときに、「Aはこの人が得意そうだからやらせるけれど、君はCが得意そうだから、Cを担当してほしい」と。そのようにうまく全体像を見せた上でやっていくことが大事だという感じでしょうか。
山浦 仕事というのは、多分そうだと思います。そういう青写真を描いた中で、「強み」「弱み」「カバーし合う」という役割が出てきます。それから、同じ役割に2人、3人と置くから競争が始まってしまう。そうすると「あの人が」「この人が」という感情にもなりやすいのです。
同じ土俵でありながら、強みを生かして担当する役割は違う。そのようにすみ分けさせることによって、余計な妬みの感情を沸き起こさせなくて済むのかと思います。
●「組み合わせ」と「予防」――妬みを生まない風土づくり
―― 具体的に想定できる例でいいますと、年齢差がある場合。例えば年下の人のほうがどうもできそうな感じもあり、上から見た場合にはその彼を成長させるためにもやや大きめの仕事を任せてみようか、というような場合、「なんで、あいつが」というような嫉妬を買ってしまうケースも多いように思います。その場合のコントロールは、どういう感じになるのですか。
山浦 そのあたりはチームの状況にもよるので、一概には言えないかなと思います。ただ、一人だけで仕事をすることはあり得ない話なので、そこに経験豊富な、ちょっと年輩の方をサポート役やフォロー役、あるいは指南役のような方とペアを組ませる、バディ(仲間)として組んでみるということもあるでしょう。そのあたりはチームの状況、あるいはどういう年齢構成か、どんな多様性があるかとの相談かなと思います。
―― より具体的にお聞きすると、よく聞く例で、一概にこう言ってしまうと問題になるかもしれませんが、男性ばかりのチームと女性ばかりのチームといった場合です。こうしたときに、例えば男性の上司からすると、女性ばかりのチームを指導する難しさがあることもあるでしょうし、おそらく逆の場合もあるだ...