野獣の経営、家畜の経営
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
楠木建(一橋大学大学院 経営管理研究科 国際企業戦略専攻 特任教授)
焼け野原から復興する力。これは日本人の類いまれなる特質の1つだが、野獣のような経営者を生み出すために、もう一度、焼け野原になることを望むのは非現実的で、かつ非効率だ。では、現代において野獣を育てるものは何か。それは研修やOJTではなく、センスが育つ土壌をつくれるか否かにかかっている。(全2話中第1話)
※インタビュアー:神藏孝之(テンミニッツTV論説主幹)
時間:16分08秒
収録日:2020年9月18日
追加日:2020年11月12日
≪全文≫

●高度成長を支えた経営者は経営センスが育ちやすい時代に生きていた


―― どうして日本の企業は、これだけ家畜みたいな人が多くなって、野獣といいますか猛獣みたいな人が出てこなくなったのでしょうか。戦後は、松下幸之助にしても、本田宗一郎にしても、猛獣だらけだった時期があり、やり方は相当荒っぽいけれども、経済的には全体的に上がって、勝ち残る企業がいっぱい出てきました。

 しかし、ある段階から、すっかり家畜的な人が増え、企業としても、全体的にガーッと下がっていく。代わりに、今話題になっているファーウェイ創業者兼CEOの任正非氏とか、フォックスコンの創業者、郭台銘(テリー・ゴウ)氏とか、中国や台湾から猛獣系が出てきています。

 人間に対する鋭い観察眼をお持ちで、人に会うことが趣味、人を見抜くことに長けた先生から見て、どうしてこんなにも目利きがいなくなったのか、あるいはセンスのある人を見いだすことができなくなったのか、育てられなくなったのかという点について、どのようにお考えでしょうか。

楠木 それは、かなり環境の産物のような気がしています。日本の人たちの経営センスが劣化しているというよりは、経営センスが育ちにくい環境を生きてきた人たちが、今たまたま経営をするような世代に多い。また、日本の高度成長を支えた獰猛な経営者は、猛獣になりやすく、センスが育ちやすいような時代に生きていたというのが、大きいのではないでしょうか。

―― なるほど。

楠木 ですから、とりわけ中国はそうですが、経済成長を始めた後、そうした環境を反映して、人材が出てきやすくなっているというのが、1つには大きいと思います。だから、もし日本が、本当に壊滅的なことになれば、また、焼け跡から猛獣が間違いなく現れるでしょう。ただ、それを待つのはばかばかしい。

―― ばかばかしいですよね。

楠木 焼け跡になってしまうと失われるものが大きすぎますから、生焼けくらいで、そういう人に出てきてもらいたい。


●「日本企業」を主語にして議論するのはやめたほうがいい


楠木 ただ、「日本企業」といってしまうと、集合名詞として、使い勝手が悪いのではないかと、私は最近よく申し上げています。小学校のクラス、例えば、6年2組を見ると、それぞれ個性がある小学生たちといっても、普通の子どもなので、同じような感じなのです。しかし、そこから4...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(1)ビジネスのヒントは歴史にあり
『失敗の本質』、中国古典…ビジネスのヒントを歴史に学ぶ
三谷宏治
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
田口佳史
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(29)歴史作家の舞台裏を学べる
歴史作家・中村彰彦先生に学ぶ歴史の探り方、活かし方
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
内側から見たアメリカと日本(6)日本企業の敗因は二つのオウンゴール
日本企業が世界のビジネスに乗り遅れた要因はオウンゴール
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――認知行動療法とポジティブ・ルーティーン
西野精治
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏