失敗する日本企業の構造と改革への宿題
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トップと現場では求められるマネジメント能力が違う
失敗する日本企業の構造と改革への宿題(3)マネジメント能力の重要性
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部 教授)
企業における全体的な調整や大きな方向転換は、現場の調整力が長けていればできるというものではない。そこはトップマネジメント能力が必要となる。人材育成のあり方として、若い世代には小さい会社でいいので早い段階でトップマネジメントの経験を積んでおくことが、将来大きな会社でそれを行ううえで大事なことである。(全4話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:12分03秒
収録日:2020年11月18日
追加日:2021年1月9日
≪全文≫

●トップマネジメントとミドルマネジメントでは求められる資質が違う


―― そうなると、必要になる人材像というのは、どういうイメージになるんでしょうか。

柳川 必要な人材像は、やっぱりそういう大きな全体の最適、あるいは全体の方向転換みたいなことをしっかりマネージできるマネジメント層ですね。やっぱりここが、ずっといわれていることだと思うんですけど、日本には欠けていますし、日本がこれからやっぱり力を入れていくべき分野なんだろうと思いますよね。

―― 前回、戦時中の例をお話しになりましたが、あの当時から現場は強いけれど、いわゆる戦略が下手くそというか、なっていないと言われました。逆に考えると重要なのは、戦略における全体設計というかプロジェクトマネジメントというか、全体を見て大きな方針を打ち出す人材をどう育てていくかというところだと思います。

 少し考えてみると、例えば現場レベルでの調整ができる人であれば、なんとなくそういうことは分かるのかなというのがこれまでの日本の考え方でした。つまり、そういうことをやっているうちに全体観をつかんできたら、事業部なりの枢要なポストを任されて、やがて経営陣に入っていくというのがこれまでの日本の流れだと思います。

 そうしたこれまでの日本の流れで足りない部分というか、むしろそれがマイナスになっている部分はどういうところなのでしょうか。

柳川 場合によると、ある部門にずっといて、その部門の長をした後すぐトップになって全体調整をしなきゃいけないというようなことが人事に関しては、割と多くの会社で起こってきていることです。しかし、全体の調整とか大きな方向転換のようなことをマネジメントした経験がなく、個別の事業部内での調整しか経験したことがないと、そこはなかなか難しいと思います。

 ここには二つのポイントがあります。一つ目ですが、ベーシックな話からすると、日本人だけでもないのかもしれませんが、特に日本について思うのは、「優秀な人はなにをやっても優秀だ」という感覚があることです。だから、現場で優秀な人はマネジメントも優秀なはずだし、部門長をやれた人はトップもやれるはずだという、こういう感覚があるんだと思うんです。しかし、これは必ずしも正しくないと思うんですね。それぞれに特性があったりしますし、その仕事を経験していないと、他のところで優秀で...

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