オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
『貞観政要』が人気…日本の経営幹部研修で好まれる理由
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(5)東洋的リーダーシップ
三谷宏治(KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授)
年功序列の上下関係が根を張る日本型組織が、いきなりその体制を超分権型組織に切り替えるのは容易ではない。そこで今、日本の経営者が注目しているのが、部下からの忌憚ない助言の価値を説く『貞観政要』だ。これからの日本の組織に必要な柔軟性のあるリーダー像を解説する。(全5話中第5話)
時間:11分35秒
収録日:2024年9月17日
追加日:2025年1月10日
≪全文≫

●『貞観政要』に学ぶ、部下からの進言の重要性


 皆さん、こんにちは。三谷宏治です。『オリエント 東西の戦略史と現代経営論』。今回は東洋的リーダーシップです。

 今、経営幹部の研修などで受けているのが『貞観政要』です。

 『貞観政要』は唐王朝の2代目皇帝の太宗、李世民と部下たちの言行録で、簡単にいうと、部下たちが盛んに諫言、痛いことをいうのです。すると太宗がそれを聞き入れ、いい政治をしました。単にそれだけの内容なのです。

 ではなぜそれだけの本が受けているのかというと、上下関係や序列をもとにした日本の組織やリーダーシップのあり方にフィットしているからです。近年、特に欧米流の組織やリーダーシップの考え方が入ってきていますが、良くも悪くも日本の伝統的な土壌とは合わない部分があったりします。『貞観政要』はその意味で日本人の腑に落ちやすく、受け入れられやすいのです。

 日本の社長たちは「三権の長」といわれ、強い権力を握ってきました。しかもそこに日本の論語的、儒教的価値観が加わると、下は遠慮したり、忖度したりして、上に厳しいことは言えません。そうすると、上の全能感がどんどん高まって、最初はまともだったとしても、徐々に堕落してしまうケースが後を絶ちません。また、そういう人に限って高齢になっても影響力を持ちたがります。そういう中で、下から諫言を受けて、自分のやることを正していく。そんな麗しい関係を築き得た皇帝と臣下の話は、特に日本のリーダーたちに心底響くようです。

 どういう人を諫言役にしたかというと、元敵なのです。魏徴、そして王珪という2人が有名な諫言役ですが、2人とも太宗を殺そうとした敵の参謀でした。けれど、投降してきたので、太宗は許して自分の諫言役にしたのです。2人は恩に感じて、どうせ死んだ身だから本当のことを言ってやろうと直言し続けました。まさに「人生、意気に感ず」なのです。その結果、魏徴は太宗に対して数百回も諫言しましたが、そのほとんどを太宗も聞き入れるという理想的な君臣関係が結ばれました。

 諫言を聞いて改めるべきところは改める皇帝と、親愛と感謝をベースに死ぬ気でガンガン諫言する臣下。この姿が今の経営者たちの心に響くのです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
組織心理学~若者とのコミュニケーション(1)「Z世代」の特徴と接し方
Z世代は傷つきやすい!?…昔の世代との相違点、共通点とは
山浦一保
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
生き続ける松下幸之助の経営観(1)今も生きている幸之助
松下幸之助の考え方には今と昔を貫くものがある
江口克彦
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(2)MAGAの矛盾と内戦の現状
MAGA内戦勃発…なぜトランプがMAGAの敵になってしまうのか
東秀敏
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
第2次トランプ政権の危険性と本質(1)実は「経済重視」ではない?
ブレーキなき極右ポピュリズム…文化戦争を重視し経済軽視
柿埜真吾
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(2)プロテスタントと「予定説」
カトリックとプロテスタントの違いは?「救済予定説」とは?
橋爪大三郎
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理