オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
GM成功の鍵は中国古典『韓非子』と『論語』にあり
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(3)法治と徳治
三谷宏治(KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授)
中国古典では、組織の統治法として2つの方法が論じられている。一つが『韓非子』に代表される「法治」であり、もう一つが『論語』に代表される「徳治」である。法やルールで組織を統制するのか、リーダーの人徳で部下を束ねるのか。法治と徳治の一長一短を見ながら、両者をハイブリッドした成功例を紹介する。(全5話中第3話)
時間:10分51秒
収録日:2024年9月17日
追加日:2024年12月27日
≪全文≫

●法治と徳治:組織の2つの統治方法


 三谷宏治です。『オリエント 東西の戦略史と現代経営論』から組織と統治を紹介します。

 中国古典では組織の統治方法として法治(法による統治)と、徳治の2つの極がありました。

 まず、法治は『韓非子』に代表され、法と権力、賞罰を用いて組織を統制し、成果を上げる考え方です。法治は軍隊組織が起源で、トップダウンの指揮で、組織が一枚岩となり勝利を目指します。しかし、問題は兵士のモチベーションが基本的に低いことです。誰も死にたくないし、殺したくない。ゆえに『孫子』のような兵家では、戦場に兵士のモチベーションをむりやり高めるために、兵士を窮地に追い込む「背水の陣」などの方法を用いるわけです。

 『韓非子』の法治は人間を弱い存在と捉え、賞罰で動かすことを重視しますが、これに依存しすぎると組織は助け合いがなくなり、権力闘争に陥りやすくなります。

 一方、『論語』に代表される徳治はリーダーが徳を備え、信頼を築くことで組織を運営する考え方です。しかし、徳治に依存しすぎると、今度は指示待ちや忖度が横行し、異論が言えない環境になることがあります。

 これらの長所と短所を補うために、歴史的には法治と徳治を組み合わせたハイブリッドな組織が理想とされてきました。例えば、組織の設計は法治に基づいて行い、運営は徳治を活用するという方法です。組織の基盤を法治で固めつつ、実際の運用は信頼関係を重視し、協力し合う形で進めます。こうすることでチームの成果を最大化できますが、問題が起きた際には法治に戻り、不祥事を厳しく処断する必要もあります。

 また、チーム作りの際には知らない者同士を集めて、互いを見張るシステムを導入し、運営では信頼感を醸成する方法などもあるでしょう。それでも不祥事が起きたら法治に基づいて問題を処理し、再び徳知的な運営に戻せばいいのです。


●法治と徳治のハイブリッドで成功したアルフレッド・スローン


 20世紀の前半、GMという巨大自動車会社は顧客ターゲット別の5事業部に分かれ、見事な分権経営を行っていました。その中核が中興の祖、アルフレッド・スローンでした。彼はGMに買収...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
ハラスメント防止に向けた風土づくり(1)ハラスメントの概要
増え続けるハラスメント…その背景としての職場の特徴
青島未佳
イノベーションの本質を考える(1)イノベーションの定義
イノベーションの定義はパフォーマンスの次元が変わること
楠木建
東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?
経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」
田口佳史
野獣の経営、家畜の経営(1)経営センスが育つ土壌
ファーストリテイリングで経営者が育つ理由
楠木建
バブル世代の現実とこれからの生き方
バブル世代は「バブル崩壊世代」、苦労の先に見えるものがある
江上剛

人気の講義ランキングTOP10
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
歴史の探り方、活かし方(4)史実・史料分析:秀吉と秀次編〈上〉
史料読解法…豊臣秀吉による秀次粛清の本当の理由とは?
中村彰彦
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
内側から見たアメリカと日本(4)アメリカ労働史とトランプ支持層
ギャングの代わりに弁護士!? 壮絶なアメリカ労働史の変遷
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(4)全てをつなぐ密教の世界観
密教の世界観は全宇宙を分割せずに「つないでいく」
鎌田東二
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
徳と仏教の人生論(3)無分別知と全人格的思惟
般若とは何か――秋月龍珉からの命題を探求し到達した境地
田口佳史