●失敗の本質:2つの失敗要因
三谷宏治です。今回は『オリエント 東西の戦略史と現代経営論』から『失敗の本質』を紹介します。
『失敗の本質』という本では、日本軍の第二次世界大戦における失敗が経営的視点で分析されていて面白いですよね。この本では、まずミッドウェー海戦やインパール作戦など、6つの大規模な作戦行動について、その経緯と失敗の原因が詳細に分析されています。
次いで2章では、失敗の本質として、「戦略上の失敗要因」が5つ、「組織上の失敗要因」が4つ挙げられています。前者はそもそも戦略目的が曖昧で、統一行動が取れないというところから始まり、意思決定が論理的でなく情緒や空気で決まる。いつも奇襲戦法ばかりで戦略オプションが進化しないなどが指摘されています。
そして、組織上の失敗要因では、人的ネットワーク偏重の組織構造や評価が結果ではなく、プロセスや動機でなされることなどが描かれています。大規模な作戦が破滅的な結果で終わっても、責任者である司令官や作戦参謀レベルが一時期の左遷や転勤ですまされることがままありました。そして、要職に復帰して次の大失敗を引き起こします。
特に陸軍では積極論者は失敗が許され、自重論者は冷遇されました。インパール作戦でも作戦に反対した現場幹部は全て更迭され、反対の声は止みました。作戦を主導した牟田口廉也司令官を諫めようとする現場の努力も、軍上層部からの「それでは牟田口の体面が悪い。彼の積極的意欲を尊重せよ」との言葉でうやむやに。
結局、軍幹部全員が、首相でもあった東條英機大将の悪化した戦局を打開したいとの意向を忖度し、論理性ではなく、対面や人情で意思決定や人事を行いました。これで戦いに勝てるわけがありません。
●明確な戦略目的がないと失敗は繰り返される
3章では、だからこうすべきだという解決策が、自己革新組織の原則として6つ挙げられました。1つ目が面白くて、不均衡の創造です。「一枚岩の組織はダメだ」の裏返しです。不均衡を生むには能力主義による抜擢人事をしなくてはならない。平時から戦時への切替人事が必要だということです。
他にも、創造的破壊による突出や...