オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
データ民主主義――情報格差をなくしたAmazon開発者の行動
オリエント 東西の戦略史と現代経営論に学ぶ(4)超分権的組織
三谷宏治(KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授)
組織の上下関係をなくし、よりフラットな組織運営を可能にする「超分権的組織」。その取り組みの事例が世界的に出てきている。社内での情報格差をなくす「データ民主主義」によって、立場に関係なく情報分析が行え、より創造的な企業経営ができる。その事例を見ていこう。(全5話中第4話)
時間:7分44秒
収録日:2024年9月17日
追加日:2025年1月3日
≪全文≫

●情報をオープンにして上下関係をなくす「データ民主主義」


 三谷宏治です。『オリエント 東西の戦略史と現代経営論』の中で、今回は超分権的組織を紹介します。

 Amazonで買い物をすると、「○○とよく一緒に購入されている商品」というおすすめが出てきます。お金を払う前に、もう一段の衝動買いを狙っているわけです。これを提案したグレッグ・リンデンは当時、上司たちから徹底的に否定されました。デモまで作ったのに、テストすら許されませんでした。憤慨したリンデンは実地テストを勝手にやりました。レコメンデーション機能ありとなしで実際の売上の差をとったのです。そして、その機能がAmazonにもたらす膨大な利益を明らかにして、上司たちの反対意見を一気に葬り去りました。リンデンは、この行動によってAmazon最初期のレコメンデーションエンジンの開発者の栄誉を得たのです。

 バラク・オバマの選挙運動を支援したグーグルのダン・シロカーは、そういったデータの力による上下関係の消失を「データ民主主義」と呼びました。

 実地の比較テストの結果データの前に、身分や地位の上下はなく、全ての人類は平等なのです。だから選択肢を出して、作って、試してみればいいのです。頭の固い上司の許可を得ることも、皆で事前に合意をとることも、顧客を無理に説得することも必要ありません。データ民主主義の下で超分権的な試行錯誤型経営がもう始まっているのです。

 組織での上下関係やタコツボ化は、指揮命令権、「言うことを聞かなければダメだ」、もしくは「他部署は口を出すな」だけではなく、情報格差によっても生まれます。大して秘密でもないのに重要な情報は上司だけが持っているので、(部下は)上司に勝てません。売上の詳細データや顧客別・商品別の収益データなどは、たしかに他者に漏れてはいけない秘密でしょう。営業本部の中でも、それらの情報に触れられる人は一部にされています。でも、本当は関連する全ての社員が分析したら、もっと面白いインサイトが得られるのです。

 サイボウズなど、いくつかの企業ではそういった情報がオープンにされています。社内の...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「経営ビジネス」でまず見るべき講義シリーズ
プロティアン~最先端の自律的キャリア形成(1)変幻自在のキャリア論
なぜ第二の人生のためにキャリアの棚卸しが必要か~組織から自律へ
田中研之輔
本質から考えるコンプライアンスと内部統制(1)「法令遵守」でリスクは管理できない
「コンプライアンス=法令遵守」ではない…実例が示す本質
國廣正
運と歴史~人は運で決まるか(1)ソクラテスが見舞われた「運」
歴史における「運」とは?ソクラテスの「運」から考える
山内昌之
ストーリーとしての競争戦略(1)当たり前の重要さ
柳井正氏の年度方針「儲ける」は商売の本筋
楠木建
会社人生「50代の壁」(1)“9の坂”とまさかの坂
サラリーマン人生「50代の壁」を乗り越える生き方
江上剛
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
逆境に対峙する哲学(3)修行・物語・語りの転換
武士道に学ぶ自己訓育――幻想としての順境に抗するために
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(2)コンピュータの歴史
量子コンピュータの転機となった1990年代の発見とは何か
武田俊太郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(5)恐るべき台湾への「浸透」
浸透工作…台湾でスパイ裁判が約70件、それも氷山の一角
垂秀夫