●第2次トランプ政権の「反DEI」で注目されるDEIの今後
慶應義塾大学商学部の山本勲と申します。本日は「DEIの重要性」というタイトルで、「Diversity, Equity, and Inclusion」が企業経営にとってどの程度重要なのかということをお話ししていければと思います。
このDEIについて、どのように進展してきたかを少し振り返ってみたいと思います。
最初はDEIのうちのD(Diversity:多様性)にあたる部分が企業経営にとって大事だといわれた。そこで、多様性をとっていこうという「ダイバーシティ経営」が進展してきました。
その後、そこにI(Inclusion:包摂)という概念も大事だと思われるようになります。多様な人がいるだけではなく、多くの人を企業経営に活用していきましょうという姿勢です。そういう流れでDIに発展します。
その後、さらにE(Equity:公正性)という要素も大事であり、公正な取り扱いをしていかなければいけないということになり、DEI(Diversity, Equity and Inclusion)へと進展したのが、だいたい5、6年前くらいからで、多くの企業が「DEIを看板に掲げて企業経営をしている」ということで盛り上がっていました。
ところが、2025年1月に誕生した第2次トランプ政権は、明確にDEIを否定するような政策を打つようになります。いわゆる「反DEI」といった形で、DEIのバックラッシュが起きているということです。そういうことから、DEIが今後どうなるのかについて、注目が集まっているように思います。
そもそもこのDEIは、国連のSDGs(持続的開発目標)と非常に親和的だということもあり、その重要性が広く認知されてきました。トランプ政権が登場してDEIを否定するような政策を採るようになったからといって、日本の企業にとってDEIの重要性がなくなったかというと、決してそんなことはないということを、この後見ていきたいと思います。
●企業経営とDEI
では、企業経営におけるDEIについて、もう少し詳しく中身を見ていきたいと思います。
3つ要素があるうちのDiversity(多様性)、この言葉には実は2つの定義があります。1つはDemographic diversity、いわゆる「人口統計的な多様性」ということで、男性と女性、あるいは白人と白...